パイオニアは再起できるのか、マルチメディアプラットフォームとクラウドが鍵に:車載情報機器(1/2 ページ)
パイオニアは、利益率の悪化が続くカーエレクトロニクス事業の構造改革推進を中核とする、2014年度までの2年間の中期計画を策定した。中期計画で鍵を握るのは、マルチメディアプラットフォームを共同開発する三菱電機、車載情報機器のクラウドサービス活用推進で連携するNTTドコモとの業務提携である。
パイオニアは2013年5月13日、2012年度(2013年3月期)の通期決算を発表した。2012年度の通期業績は、売上高が4518億円と前年度比で3.5%増加したにもかかわらず、販売管理費の増加や原価率の悪化により、営業利益は同52%減の60億円に落ち込んだ。構造改革費用や投資有価証券評価損などにより、196億円の当期純損失も計上している。
今回の決算で浮き彫りになったのが、カーナビゲーションシステム(以下、カーナビ)をはじめとするカーエレクトロニクス事業の利益率の悪化である。同事業の2012年度の売上高は3126億円と前年度比で15%増えたが、営業利益は同5%減の98億円に落ち込んでいる。これに対して、同社の課題とされてきたホームエレクトロニクス事業は、2012年度の売上高が22%減の959億円と落ち込んだため、営業損益も64億円悪化して28億円の損失となった。しかし、272億円の売上高減少に対して、原価率の向上などによって営業損益の悪化を64億円にとどめたホームエレクトロニクス事業と比べて、売上高が408億円増えても営業損益が悪化するカーエレクトロニクス事業も抱えている課題は多いと言えるだろう。
中期計画推進の柱となる三菱電機とNTTドコモとの業務提携
パイオニアは、このカーエレクトロニクス事業の構造改革推進を中核とする、2014年度までの2年間の中期計画を策定した。中期計画におけるカーエレクトロニクス事業の業績見込みは、2013年度が売上高3570億円、営業利益120億円、2014年度が売上高3710億円、営業利益が170億円である。そして、この中期計画を進めるために、三菱電機とNTTドコモとの出資を含めた業務提携の拡大も併せて発表した。
中期計画におけるカーエレクトロニクス事業の施策は主に3つに分けられる。1つ目は、スマートフォンの登場によって、パイオニアが主力としてきたカーナビなどの車載情報機器が、単なるナビゲーション端末の領域を越えたより高度な機能が求められるようなっているトレンドへの対応である。この施策で重要な役割を果たすのが、約38億円の増資でシャープに次いで持ち株比率第2位(7.49%)となる三菱電機と、約48億円の出資で持ち株比率第3位(6.92%)となるNTTドコモだ。
2009年に三菱電機から出資を受けて以降、同社とパイオニアはカーナビプラットフォームの共同開発を進めてきた。今回の業務提携拡大では、このカーナビプラットフォームをさらに強化/充実させて、車両と制御系システムなどと連携可能な機能を備えるマルチメディアプラットフォームに進化させる方針である。具体的には、AV機能を含めたカーナビプラットフォームに加えて、パイオニアがインターネットを含めた通信対応機能を手掛け、制御系システムを自動車メーカーに供給している三菱電機が車両連携機能を担当する。このマルチメディアプラットフォームの開発によって、コスト競争力の向上と開発期間の短縮が見込める。
パイオニアとNTTドコモは、2010年10月に発表したNTTドコモのスマートフォン向け通信カーナビアプリ「ドコモ ドライブネット」(関連記事:NTTドコモとパイオニア、スマートホンカーナビで協業)や、音声エージェント機能「しゃべってコンシェル」を用いた自動車向け音声意図解釈技術の開発(関連記事:ドコモのカーナビアプリが音声入力に対応、「しゃべってコンシェル」を活用)といった、クラウドを活用した車両向けサービスで提携してきた。今回の出資により、これらのクラウドサービスとの連携が容易な通信機能を持つ車載情報機器の開発を加速させるとともに、車両内で車載情報機器やスマートフォンを使用してクラウドサービスを利用するのに最適なユーザーインタフェースの共同開発を進める。
なお、三菱電機の増資、NTTドコモの出資により、これまで第2位だったホンダの持ち株比率は4.5%から3.94%に減少し、第4位に落ちた。ただし、ホンダとの提携で進めている渋滞予測などに利用できるプローブ情報を活用したITS(高度道路情報システム)技術の開発については、今後も継続する方針に変わりはない。
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