エヌ・ティ・ティ・ドコモ(以下、NTTドコモ)とパイオニアは2010年10月、スマートホンを用いたドライバー向けカーナビゲーション(以下、カーナビ)サービスで協業すると発表した(写真1)。両社は、同サービスを2011年3月に開始する予定である。
今回発表したサービスは、「Android」プラットフォームを採用したNTTドコモのスマートホン、スマートホン向け通信カーナビアプリケーション「ドコモ ドライブネット powerd by カロッツェリア(以下、専用アプリ)」、パイオニアが開発/販売する専用クレードルを用いるものとなる(写真2)。専用アプリの開発は、同アプリで用いられる地図データを含めてパイオニアが担当し、販売はNTTドコモが行う。専用クレードルについては、パイオニアが開発、販売とも担当する。専用クレードルは、GPS(全地球測位システム)受信機、加速度センサー、ジャイロなどのセンサーを搭載している。これらセンサーからの情報を用いることで、スマートホン単体のナビゲーション機能よりもはるかに高い精度の位置認識を行えるようになる。
NTTドコモは、2010年10月末から、カーナビ向けの情報提供サービス「ドコモ ドライブネット」を開始している。NTTドコモ副社長の辻村清行氏は、「市販カーナビのトップメーカーであるパイオニアと協業することにより、ドコモ ドライブネットのサービスをさらに充実させることが可能になる」と語る。
一方、パイオニアがNTTドコモとの協業を決定した理由は、急激な市場拡大が予想されるスマートホン向けカーナビサービスの需要を取り込むためである。パイオニア社長の小谷進氏は、「数年前から一気に需要が拡大してきたPND(Personal Navigation Device)の市場規模は、世界全体で3800万台とも言われる。しかし、PND市場はすでに成熟しつつあり、今後はナビゲーション機能を備えるスマートホンに移行していくと見られている。当社は、スマートホンを用いたカーナビサービスが今後の成長をけん引すると考えており、そのために事業モデルの変更を進めているところだ」と説明する。
同社が、スマートホンに対応する事業モデルで成長領域と見ているのは、地図データ、渋滞予測などに利用できるプローブ情報、今回発表した専用クレードルのようなハードウエアの3つである。これらのうち、地図データについては、同社の子会社である地図データ大手のインクリメントPの資産を有効に活用する。プローブ情報については、2007年に開始したリアルタイムでプローブ情報を収集できる「スマートループ」などによってすでに多くの蓄積がある。そして、通信を行うことが前提となるスマートホン向けのカーナビサービスでは、さらに多くのリアルタイムプローブ情報を手に入れることが可能になる。
なお、ドコモ ドライブネットでは、2010年10月末のサービス開始時には全国1万2000台のタクシーから得たプローブ情報を用いる。このプローブ情報をベースに、ドコモ ドライブネットのユーザーのプローブ情報を追加していく。一方、今回のスマートホン向けカーナビサービスでは、パイオニアの所有しているプローブ情報を用いる。同サービスで得たプローブ情報についても、パイオニアが管理することになる。
スマートホン向けカーナビサービスの通信費用は、スマートホンの通信契約に準じる。専用アプリや専用クレードルの価格は検討中だ。専用アプリについては、Androidのバージョンが2.1以降のスマートホンであれば利用できる見込み。専用クレードルについては、「アクセサリ製品として販売する予定なので、その価格帯から大きく外れることはない」(パイオニア)という。
(朴 尚洙)
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