日産のコンセプトカー「Friend-ME」が示す若者向け自動車のあり方:車両デザイン
日産自動車が「上海オートショー」で公開したコンセプトカー「Friend-ME」は、大型の部類に入るセダンであるにもかかわらず、乗車人員は4人と少ない。これは、「八零后(バーリンホウ)」と呼ばれる中国の1980年代生まれの世代をターゲットにした開発コンセプトによるところが大きい。デザインを担当したフランソワ・バンコン氏によるコンセプト紹介映像も公開されている。
日産自動車は、「上海オートショー」(2013年4月20〜29日)において、コンセプトカー「Friend-ME」を公開した。外形寸法は全長4540mm×全幅1820mm×全高1340mmで、かなり低めの全高を除けば大型の部類に入るセダンとなっている。しかしながら乗車人員は4人で、5人ではない。これは、Friend-MEの開発コンセプトによるところが大きい。
Friend-MEは、中国で最大の人口セグメントとなる1980年代生まれの「八零后(バーリンホウ)」をターゲットとして開発された。八零后は、1979年に始まったいわゆる一人っ子政策以降に生まれた若者層で、その人口規模は2億4000万人とも言われている。
八零后の中でも、Friend-MEを開発する上で焦点を当てたのが、20代半ばの男性の社会的な行動形態である。八零后は、両親からの愛情を一身に受けて成長したことによって、「わがまま」、「利己的」、「世間知らず」などと批判されてきた世代だ。その一方で、改革開放政策後の発展とともに育つことで従来にない考え方を持ち、今後の中国の成長を推し進める世代として期待されてもいる。批判、期待、責任などを複雑に内包した世代といえるだろう。
基本的に八零后は、一人っ子政策のために兄弟姉妹がいない。このため、学校や会社の友人など、仲間と共有する時間を重視する傾向にある。しかし、「わがまま」という批判に代表されるように自身の独立性も重んじている。
そこで、Friend-MEのシート構成は、ドライバーを含めた4人の乗員が、全て対等な仲間であることをイメージさせる作りになっている。前席と後席のシートは、4席全てが独立している。前席と後席の左右は、ダッシュボードから後席まで伸びる一体型センターコンソールによって分かれており、各席の独立性を保つのに一役買っている。
このセンターコンソールは、運転席を含めた各席から自由に操作できる。車速や燃料の残量、ナビゲーションといった車両に関する情報だけでなく、車両が通り過ぎた周辺施設の情報などを映し出す機能も備えている。車室内での音楽の再生については、全員が同じ音楽を聴くこともできるし、4人それぞれが自分のシートで自分の好きな音楽を聴くこともできる。乗員それぞれの携帯電話機とセンターコンソールを連携させれば、乗員の1人が面白いと思ったコンテンツを4人全員で共有することも可能だ。
Friend-MEは、そのシート構成とセンターコンソールの機能によって、「プライベートでありながら仲間同士はつながっているスペース」(日産自動車)を求める、八零后の夢をかなえた車両だという。デザインを担当した、同社商品企画本部の本部長を務めるフランソワ・バンコン氏も、「今後数十年の世界の自動車トレンドは、八零后の男性の嗜好(しこう)によって形作られていくことになる。そのため、われわれは注意深く八零后の男性の将来の夢に耳を傾け、その夢に手が届くような商品を提案していくことが重要だと考えている。Friend-MEはその最初の提案になる」と述べている。
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