「世界経済の潮目の変化に対応する」、東洋ゴムが新経営方針を説明:ビジネスニュース
タイヤ大手の東洋ゴム工業は、東京都内で会見を開き、新社長に就任した信木明氏をトップとする新経営体制について説明。「世界経済の潮目の変化に対応」(信木氏)しながら、企業力を高めて、持続的かつ革新的に成長し続ける方針を示した。
タイヤ大手の東洋ゴム工業は2013年4月23日、東京都内で会見を開き、同年3月末に新たに社長に就任した信木明氏をトップとする新経営体制の方針について説明した。
信木氏は、「社員ぞれぞれの意識を高めることで企業力を高め、持続的かつ革新的に成長し続けたい。そのために、成長に必要な『顧客基盤』、『コスト競争力』、『商品戦闘力』、『営業・マーケティング力」、『ブランド力』、経営の基礎となる『人材基盤』、『業務基盤』、『戦略立案プロセス』といった8つの強化テーマに合わせた13の社内プロジェクトの推進部会を設置した。各部会は、次代を担う人材に取りまとめを任せている。この結果を実際の経営に取り込むことで、企業力を高める一助としたい」と語る。
現在の経営環境については、「欧州の景気が負のスパイラルにはまり込み、新興国の需要も一部鈍りつつあるものの、これまで苦戦が続いていた北米市場の回復傾向が鮮明化しており、為替環境も以前よりは良くなってきた。今まさに、世界経済は潮目の変化を迎えつつあるのではないか」(信木氏)と見ている。
本社を伊丹市に移転
先進国から新興国まで東洋ゴム工業への要求はさまざまだが、各市場にマッチするような製品仕様を実現しながら、価格動向なども予測して行かなければならない。そこで、創立70周年を迎える2015年8月に、タイヤの技術開発拠点であるタイヤ技術センター(兵庫県伊丹市)と同じ敷地内に本社を移すことを決めた。
同社は2012年5月に、経営のスピードアップを図るため、東京本社を大阪本社(大阪市西区)に統合したばかり。伊丹市への本社移転により、経営と技術の拠点を1カ所に集中させて、緊密な連携を図りたい考えだ。また、2013年11月開設予定の研究開発拠点(兵庫県川西市)も、新本社と自動車で約20分の距離にあるため、同社の中核拠点は兵庫県の東部に集まることになる。「本社の移転先である伊丹市は、空港や新幹線へのアクセスもよい。技術や研究開発の拠点との連携も深められるというメリットを含めて、実を取った形だ」(信木氏)という。
売上高5000億円を早期に実現
東洋ゴム工業は、2011年に策定した5カ年の中期計画「中計’11」の目標として、2015年度に売上高4000億円、営業利益300億円の達成を掲げている。さらに長期ビジョン「ビジョン’20」では、2020年度に売上高6000億円、営業利益600億円の達成を視野に入れている。
これに対して2012年度(2012年12月期)の業績は、決算期を変更したことにより国内の売り上げが9カ月分しかなかったものの、売上高2911億円、営業利益156億円となり、営業利益率は過去最高となる5.4%を達成した。2013年度の業績予想も、これまでで最高となる売上高3600億円、営業利益220億円を見込んでいる。信木氏は、「中計’11の目標達成のみならず、ビジョン’20の足掛かりとして、早期に売上高5000億円を実現させたい」と意気込む。
低燃費タイヤ「NANOENERGY」の売れ行きが好調
東洋ゴム工業の売上高の80%近くを占める主力のタイヤ事業は、日本、米国、アジア(中国とマレーシア)の3極体制で生産を行っている。マレーシアに建設した新工場は、2012年末時点から年産250万本で量産を始めており、2015年度には年産500万本まで増強する計画だ。
同社の2010年度のタイヤ生産規模は年産2900万本だったが、2015年度にはマレーシア工場の増強分を含めて年産4500万本まで増やす方針である。同社取締役常務執行役員でタイヤ事業本部長を務める山本卓司氏は、2015年度以降の生産体制について、「マレーシアの新工場は年産1000万本まで増やす余地があるし、米国ジョージア州の工場も増強可能だ。ロシアやメキシコなどを候補地とした新工場の建設も検討している。しかし、生産能力の増強や新工場の建設は、工場のある地域でのタイヤ販売力を高めながら進めなければならない」と説明する。
また、低燃費タイヤの新ブランド「NANOENERGY」については、転がり抵抗の低減と摩耗性能の向上を両立した「NANOENERGY 3」を2012年12月に発売した効果もあって、「計画の約2倍に達する売れ行き」(山本氏)を記録している。今後は、NANOENERGYのグローバル展開も本格化させる方針だ。
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