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第22回 オンチップ電源前田真一の最新実装技術あれこれ塾(2/3 ページ)

実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第22回は、インテルの次世代CPUアーキテクチャ「Haswell」などで注目されてきた「オンチップ電源」について解説する。

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 例えば、2012年の世界のスーパーコンピュータTop500ではインテル社のXeonが半数近くに使われています。ノートPCだけではなく、これらのサーバやスーパーコンピュータでも省エネは非常に大きな性能要素になっています。

 サーバでは電力料金に値上げや世の中の省エネの流れに乗って、システムの消費電力が大きな注目を集めています。CPUの消費電力が減れば、当然、発熱も少なくなり、空調設備のコスト、電力も大幅に減り、電源設備と合わせ、大きなコスト削減になります。

 スーパーコンピュータでは電源はもっと大きな問題となります。

 例えば、スーパーコンピュータ『京』(図5)では、2012年11月TOP500リストのベンチマーク計測時の電力使用量は、約12.66MWでした(富士通のHPより)。

図5
図5 京(富士通)

 2012年11月に『京』を抜いて性能トップと2位になったシステムの消費電力は『京』の2/3程度です。

TOP10の中では最も電力効率はよくありません(表1)。

 しかしこれでも『京』は、TOP500の中ではまだ電力効率は良い方なのです。

 このままでは、スーパーコンピュータを作るためにはまず発電所から作らなければならなくなります。このため、スーパーコンピュータでも性能/消費電力が大きく注目され、性能指針として取り上げられています。

 このように、スーパーコンピュータからノートPCまで、CPUの消費電力が大きな問題になっています。

 インテル社が新しいCPUアーキテクチャで消費電力問題に本質から向き合ったのはこのような背景からです。

表1
表1 スーパーコンピュータTop10(2012)(Top 50 Super Computer)

4. Haswellの消費電力問題対策

 ここで、Haswellの消費電力はCPUが動作していない時の待機電力を現在のIvy Bridgeの1/20、トータルの消費電力を1/2にするといわれています。

 いきなり待機電力を現在の1/20にするといっても、これは簡単ではありません。現在のIvy Bridgeでも現在の技術で可能な限り、消費電力を低減するための努力はしています。

 このため、多くの新しい考えや技術の改善を行い、それらを一つ一つ積み上げて消費電力の低減を行っています。

 その中でも実装にとって特に気になる機能に、次のような記述があります。“……Haswell has on-die voltage regulator……”。LSI内部にレギュレータ回路を実装したものをオンチップ・レギュレータと呼び、ここ数年、研究されてきています。インテル社でも、数年前からこの技術を研究していて、その成果などを発表していました。

 そしてついにHaswellにこの機能が実装されるようになったものです。

 まだ、Haswellにどのような回路が実装されるのか、どの程度の容量の電源がいくつ実装かされるなど、発表はされていませんが、これが電源の新しい時代を迎える第一歩になることは間違えないでしょう。

5. オンチップ・レギュレータ

 オンチップ・レギュレータには大きく3つのメリットがあります。しかし、技術的な困難のため、なかなか実際のLSIには実装することができません。

 まず第1のメリットは、基板実装面積の縮小とコストダウンです。現在は、LSI電源の多様化が進み、ことなるLSIではことなる電源電圧を使う場合が多くなってきています。さらに、他のICとのデータ授受や、標準インタフェースのため、1つのLSIでも多くの電圧を使っています。

 現在は、基板上でおのおののLSIの近くに電源回路を組み、おのおののLSIに供給しています。このため、基板上には多くの電源回路が存在し、電源回路のコストと、基板上で電源回路が占める領域は無視できません(図6)。

図6
図6 基板上の電源回路

 ICがおのおの、自分で使用する電圧の電源を自分で作成できるようになれば、基板面積と電源回路用の部品コストを大幅に削減できます。

 第2のメリットは、電源変動への対策です。

 SSOノイズとして知られるLSIの電源変動が大きな問題となったのは、2つの原因があります。LSI回路の大規模化による消費電力の増大による、変動の増大と信号の高速化による、消費電力変動の高速化です。

 LSIの消費電力増大は、そのまま消費電力変動の増大になり、対策部品である、バイパスコンデンサの増大を招きました(図7)。

図7
図7 大量のバイパスコンデンサ

 LSIの消費電力変動の高速化は電源変動の高速化を招き、電源供給ライン(PDN)のL成分の低下や、バイパスコンデンサ自身のL成分の低減を要求しました。

 これらの理由から、SSOノイズの変動を抑えるため、PI(Power Integrity)解析という新しい考えが生まれ、PDNのインピーダンス解析や基板の電源/GNDプレーンの設計や、バイパスコンデンサの配置、数などの決定に細心の注意を払う必要が出てきました。

 これら電源系統の解析、設計には高価な専用ツールと多くのコスト、時間がかかっています。さらに多くのバイパスコンデンサの配置や、プレーン層の追加などにより、基板や部品のコストに多大な費用がかかっています。

 また、電源のノイズは、単に信号ノイズやタイミングノイズとして信号の伝送品質を下げるだけではなく、電磁放射(EMI)ノイズの大きな原因となります。

 現在の電子機器ではEMI対策には大きなコストが費やされています(図8)。

図8
図8 EMI対策部品(Nintendo)

 基板上に電源を配置すると、基板配線やビアがもつL成分のため、LSI電源の変動を完全に抑えることはできません。このため、現在は、よりLSIに近いパッケージ上にコンデンサを載せたり、さらにはLSI内部にまでコンデンサを作り込んだりして対応しています。

 LSI内部に電源装置をもたせることができれば、配線やビアのもつL成分の影響がなくなり、電源電圧安定化のためには理想的な状態になります。

 さらに、LSI内部の小さな回路ブロックごとに電源回路をもつようにすれば、おのおのの電源回路に対する消費電力の変化は小さくなるので、さらにLSIの各回路の電源電圧は安定します(図9)。

図9
図9 ループが小さいとレスポンスが速い

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