寿命10年のリチウム電池、日立マクセルが「見える化」で実現:スマートグリッド(2/2 ページ)
電池に望む性能を2点挙げるとすれば、長寿命と高密度(大容量)だろう。しかし、2つの性能を同時に高めるのは難しい。長寿命は信頼性が前提となり、高密度化すると信頼性が下がるからだ。日立マクセルはこの矛盾を解く手法を編み出した。動いている電池を外部から透視する「見える化」だ。
何が「見えた」のか
可視化技術では3つの成果が得られたという。まず、充放電中の電池の反応をその場で観察したことである。例えば負極のグラファイトにリチウムイオンが入り込むインターカレーション反応だ(図3)。
次に、負極の一部にリチウムイオンが集中した場合にデンドライトの発生確率が上がることを突き止めた。反応中の偏りを一目で判断できるようになった。
3番目はリチウムイオンの流れの制御だ。電池への充電、電池からの放電はリチウムイオンが電極から出入りすることで実現する。つまり、電池全体の構造を改善して、ボトルネックをなくさなければならない。「ミクロ構造、マクロ構造、正極、負極、セパレータ、全ての構造を対象に改善することで、電池全体のリチウムイオンの流れをコントロールした。どれか1つ欠けても、均一反応にはならない」(日立マクセル)。
SPring-8では例えば正極におけるリチウムイオンの挙動を可視化して、どの部分で滞留が起こっているかを特定できた(図4)。3次元シミュレーションと組み合わせることで、問題箇所を絞り込み、その後、可視化するという改善手法だ。
【訂正】 記事の掲載当初、複数箇所で誤りがございました。お詫びして訂正いたします。上記記事は既に訂正済みです。2p目の第1段落「SPring-8を使った可視化技術」を「可視化技術」に、第2段落の「SPring-8を使うことで、反応中の……」を「反応中の……」に修正いたしました。
「今回の研究開発では、正極のみをSPring-8で可視化し、負極は可視光でリアルタイム観察した」「正極は『ほぼ』リアルタイム観察と言える。反応中の電極の状態をそのままいったん『瞬停』し、その状態を維持したままSPring-8で観察しているからだ」(日立マクセル)。
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