ガラスと樹脂で作った電池、リチウムを超えるのか:スマートグリッド(1/3 ページ)
イーメックスはリチウムイオン二次電池と似た新型電池を開発した。「高分子・ガラス電池」と呼ぶ。20年以上利用でき、低コスト化が可能だ。さらに充電時間が数分と短い。これはリチウムイオン二次電池では実現が困難な優れた性質だ。どのようにして新電池を実現したのだろうか。
イーメックスは2012年2月、リチウムイオン二次電池を上回る長寿命で低コストな新型電池「高分子・ガラス電池」を開発した(図1)。
従来のリチウムイオン二次電池の性能は頭打ちになっているが、正極と負極に新材料を用いることで性能向上を果たしたという。「現在、性能評価を終えて、小型の連続製造装置が完成したところだ」(イーメックスの代表取締役である瀬和信吾氏)。
同電池の特長を一言でいうなら、エネルギー密度に優れる二次電池と、パワー密度に優れるキャパシタの良いところ取りをした電池である。小型の電気自動車(EV)や太陽光発電システムとの併用などに向くとした。キャパシタに向く用途、すなわちEVのエネルギー回生や建機などにも役立つという。
図1 イーメックスの高分子・ガラス電池 高分子・ガラス電池の試作品(図左の白い板)と正極(図中央)、負極(図右)。正極は連続生産するために帯状になっている。負極は金属箔(はく)に粉末状のガラス材料を塗布したものだ。出典:イーメックス
新電池が特に優れるのは1秒間に取り出せるエネルギーの量を示すパワー密度だ。7000W/kgという新電池の値は、電気二重層キャパシタ*1)以上であり、短時間で大電流が必要なモーターなどの用途に向く。パワー密度が高いため、充放電に要する時間も短い。通常のリチウムイオン二次電池では30〜60分を要する充電時間を3〜10分に短縮できる。
*1) 電気二重層キャパシタとは、電極のすぐ近くの界面にできる「電気二重層」と呼ばれる、分子の長さに匹敵するほど薄い層を蓄電に利用するキャパシタ(コンデンサー)。ごく薄い電気二重層が電力を蓄えているため、抵抗が低くなり、短時間に大電力を出し入れできる(関連記事:ガソリン車でもハイブリッドに近い燃費を実現か、マツダがキャパシタ採用)。
新電池の重量エネルギー密度は60〜80Wh/kgである。イーメックスによれば、EV用のリチウムイオン二次電池のエネルギー密度は70Wh/kgであるため、十分競合できるという*2)。今後、エネルギー密度を160Wh/kg以上に高める開発を続けるとした。
*2) ただし、携帯電話用途のリチウムイオン二次電池のエネルギー密度は150Wh/kgと高い。
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