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第19回 CADデータの統合とPLM前田真一の最新実装技術あれこれ塾(3/3 ページ)

実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第19回は、協調設計とCADデータの重要性や、設計を並行して進めるコンカレントエンジニアリング、PDMとPLMなどについて解説する。

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3. PLM

 PDMは主に設計を管理しますが、設計は開発だけでなくその製品の生産が終了するまで継続します。しかし、生産が終了してこれ以上の設計も発生しない製品であっても多くのデータ管理が必要となります。例えば製品のメンテナンスです。

 たとえ生産が終了した製品であってもユーザーは製品を使っています。生産が終了してからも数年以内であれば、故障したらメーカーが責任を持って修理する必要があります。この場合、数年分の故障修理用部品を管理しなければなりません。生産途中でも設計が変更されていれば、保守部品も生産された時期により、異なります。もちろん現在生産している製品でも保守は必要ですし、保守部品や修理手順は生産時期により異なります。

 営業の現場でも同じような問題は発生します。製品を購入してから後になって付属部品(アクセサリ)を購入することは良くあります。この時、同じ型番の製品でも生産時期の違いによって製品に合うアクセサリが異なることがあります。物を製造するための部品手配管理だけではなく、ユーザーに製品を販売したり、メンテナンスしたりする場合にも製品と部品に関する情報を管理しておく必要があります。

 それだけではありません。既に生産が終了し、メンテナンス期間が終了した製品でもユーザーは製品を使い続けている場合もあります。例えば、10年以上も前に製造終了したファンヒータでも、部品劣化による不完全燃焼事故が発生すれば、全てを回収する必要があります。この時、劣化する部品を使った製品は何時製造したもので、ナンバーは***とすぐに分かる必要があります。

 ユーザーから問い合わせがあれば、すぐに該当製品化どうかが分かる必要があります。世界各国の環境規制が厳しくなり、部品に有害物質が含まれるような製品の製造、出荷に対しては造者の責任が大きく問われるようになっています。また、この規制は国によっても異なりますし、年々、その規格が変化しています。新しい規格が制定されたり、規格が変更されたりした場合に、該当する部品が使われているのかどうかを判断する必要があります。このような複雑な規制に対しては、単に手配情報だけではなく、原材料の組成までを含んだ部品管理が必要となります。

 このように複雑で長期にわたるデータ管理は、PDMのような設計・開発データと部品手配を中心としたデータマネジメント、開発管理システムでは足りなくなってきました。PDMの設計・開発データと部品手配データ以外に外に、部品の組成管理、生産部門や営業、保守部門まで、製品に関係する全部門および部品供給メーカーや保守契約パートナーな土間で含んだ広い範囲で情報を共有し、効果的に活用する仕組みが必要となります。

 このような大きな仕組みやそれを支える情報システムをPLM(Product Lifecycle Management)と呼んでいます(図13)。

図13
図13 PLM概念図

 PLMから見ると、PDMはPLMの一部に含まれることになります(図14)。現在、多くの会社ではPDMを導入する動きはありますが、PLMの導入はまだ、それほど進んでいません。

図14
図14

筆者紹介

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前田 真一(マエダ シンイチ)

KEI Systems、日本サーキット。日米で、高速システムの開発/解析コンサルティングを手掛ける。

近著:「現場の即戦力シリーズ 見てわかる高速回路のノイズ解析」(技術評論社)


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