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搭乗型巨大ロボット「KURATAS」を安全に動かすソフトウェアのヒミツ【組み込み開発 EXPO 2013】連動特集

「KURATAS(クラタス)」の開発者の1人である吉崎航氏。彼が手掛ける人型ロボットのための演技指導ソフトウェア「V-Sido(ブシドー)」とは、一体どんなものなのか? “転倒しないロボット”を実現するための仕組みとは? その魅力に迫る。また、クラタスをあんな角度やこんな角度から撮影した多数のフォトにも注目してほしい!

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KURATAS(クラタス)

 「KURATAS(クラタス)」とは――。鉄鋼アーティストの倉田光吾郎氏とロボット操作用ソフトウェア「V-Sido(ブシドー)」の開発者である吉崎航氏が製作した搭乗型巨大ロボットだ。

 昨年、ワンダーフェスティバル 2012[夏]や日本科学未来館でその雄姿が披露され、多くのメディアに取り上げられたことは記憶に新しい(関連記事)。


シビれる造形美! クラタスを前に誰もが息をのむ

 クラタスは、高さ約4mの全身鉄製の巨大ロボット。動力はディーゼルエンジンによる油圧駆動で、ボディ部分にあるコックピットに搭乗し、実際に操縦することができる。言ってみれば、男性読者の多くが一度は憧れたであろうロボットのパイロットになれるのだ(あなたは、一体どんなロボットアニメを想像するだろうか?)。

KURATAS01KURATAS02 日本科学未来館に展示された搭乗型巨大ロボット「KURATAS(クラタス)」。日本科学未来館のシンボル「Geo-Cosmos(ジオ・コスモス)」との共演は圧巻! 取材時、筆者は写真を撮り過ぎてデジタルカメラのバッテリーが切れるというアクシデントも(汗)。【※画像クリックで拡大表示】

 実際、クラタスを見てもらえれば分かるが、その造形美たるや「圧巻」の一言。少々大げさかもしれないが、既にロボット兵器としてどこかの戦地に配備されているのでは? と錯覚すら覚えるほどの存在感だ。

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KURATAS10KURATAS11KURATAS12 クラタスを前にし、自然と顔がニヤけている。この感覚は、お台場に実物大「機動戦士ガンダム」を見に行ったときと同じだ。そして、いろんな角度からシャッターを切りまくる。【※画像クリックで拡大表示】

 既に多くのメディアに取り上げられているが、その内容は、クラタスそのものの魅力やロボット製作への熱い思いが語られたインタビューがほとんどで、実際にロボットを動かす際に“肝”となる、制御ソフトウェアにフォーカスしたものが少ない印象だ。そんなわけで、今回、MONOist「組み込み開発フォーラム」ではクラタスのソフトウェアに注目してみた。

パイロットの意思とロボットの動きを仲介する「V-Sido」

 クラタスに搭載されている制御ソフトウェアは、吉崎氏が開発したV-Sidoである。V-Sidoとは、実際のロボットと物理シミュレータとのリアルタイム同期技術や、手先や足先の座標から全身の関節角度を決定する逆運動学の技術、オートバランサ(サーボによる外界情報取得機能)などの技術が用いられた人型ロボットのための“演技指導ソフトウェア”だ。

 V-Sidoは、ロボットの物理モデルさえ分かれば、理論上、ロボットのサイズに依存せず、どんな大きさのものでも同じように操作できる。そのため、4mのクラタスだけでなく、120cm程度の等身大ロボットや30cmほどのホビーロボットまで展開可能だ。

KURATAS09
クラタスの前にいるのは“着ぐるみ”ではなく、れっきとしたロボット。アールティの「ネコ店長」だ。このロボットもV-Sidoが搭載されている。
吉崎航氏
奈良先端大学 情報科学研究科 博士後期課程3年/産業技術総合研究所 技術スタッフ 吉崎航氏

 お掃除ロボットのように周囲の状況を認識し、自ら判断して動く“自律型”ではなく、クラタスのような人が操縦するタイプ(操縦型)のロボットの場合、通常、あらかじめ決められた動作(「モーション」という)を呼び出すことで、幾つかの動きを再現する。アニメの世界では、巨大ロボットがパイロットの意のままに動き、さまざまなアクションをするが、現実世界ではそうはいかない。一般的に、この方式の場合、覚えられるモーション数には限りがあるし、風や地面の傾きといった環境による影響、想定外の突発的な事象に柔軟に対応できないという問題点がある。それに、そもそも安定したモーションの作成には膨大な時間がかかるのだ……。

 だが、吉崎氏のV-Sidoであれば、こうした課題を解決できる。なぜなら、“モーションを必要とせずにロボットの操作が可能”だからだ。また、V-Sidoは、既存の物理エンジンからロボット制御に必要な機能のみを実装した高速な物理シミュレータとロボット(実機)とのリアルタイム同期、逆運動学、オートバランサにより、“転倒しない姿勢”を高速に作り出すことができるのだ。

参考 V-Sidoの公式サイトで公開されている紹介映像

V-Sidoの画面
V-Sidoの画面

 さらに、V-Sidoの名前の由来でもある「指導」が直感的に行えるのも特徴だ。V-Sidoの画面上にはロボットのCGが表示され、頭や腰、手先や足先などの主要部分に操作ホイールと呼ばれるマークが描かれており、それらをマウスで動かすだけでロボットを思い通りに操作できる(タッチパネルによる操作も対応)。その他、スマートフォンからの遠隔操作やマイクロソフトの「Kinectセンサー」を姿勢入力デバイスとして活用することも可能だという。

 実際のロボットとパイロットとの間に、V-Sidoというリアルタイムシミュレータ(ソフトウェア)を介在させることで、安全(転倒せず)かつ直観的にロボットを動かせる。多くの話題をさらったクラタスには、このように非常に興味深いソフトウェアが搭載されているのだ。

 GUIベースのOS(WindowsやMac OSなど)の登場により、誰でも簡単にPCを操作できるようになった。これと同様に、ロボットというハードウェアにも、誰でも簡単に、直感的に、そして安全に操作できる仕組みが求められるだろう。吉崎氏が手掛けるV-Sidoは、ひょっとすると、PCにとってのWindowsのように、未来のロボット社会における標準プラットフォームになり得るかもしれない。



――いかがだろう。V-Sidoというソフトウェア、そして、開発者である吉崎氏への興味・関心がわいてきたのではないだろうか? そんな方へうってつけの企画がある。

 2013年2月19日から3月8日までの期間、製造業最大規模のバーチャルイベント(注1)「組み込み開発 EXPO 2013」が開催される。本EXPOの“特別セッション”として、吉崎氏とアールティの代表取締役 中川友紀子氏による対談をお届けする(撮影場所:日本科学未来館)。吉崎氏がロボット開発に着手した経緯やV-Sidoの基本コンセプト、そして、ロボット制御に求められるもの、ロボットビジネスの可能性・展開といった貴重なお話を視聴できる。

 本特別セッションを含め、組み込み開発 EXPO 2013への来場(視聴)を希望される方は、こちらから来場者登録をしていただきたい。参加費はもちろん無料だ!

撮影風景
組み込み開発 EXPO 2013 特別セッション「搭乗型巨大ロボ『クラタス』の制御ソフトウェア担当に聞く! 〜ロボット社会を実現するために必要なこと〜」の撮影風景
注1:アイティメディアが運営するバーチャルイベント「ITmedia Virtual EXPO」とは、インターネットに接続されたPCやタブレット端末などのスマートデバイスから、24時間いつでも・どこからでも来場できる“仮想”展示会です。基調講演、各EXPOで用意された特別セッション、出展社によるセミナー動画の視聴や、各種資料・カタログのダウンロードなども行えます。新しいスタイルの展示会をぜひ体験してみてください!


組み込み開発 EXPO 2013:2月19日から3月8日まで開催!

特別セッション「ロボット社会を実現するために必要なこと」

組み込み開発 EXPO 2013の特別セッションでは、V-Sidoの開発者である吉崎航氏と株式会社アールティの代表取締役 中川友紀子氏をお招きし、ソフトウェアの面から、どのように巨大ロボットや二足歩行ロボットの制御を実現したのか、V-Sidoのコンセプトやその特徴を踏まえて両者に対談していただく。また、ロボットがわれわれの生活に溶け込んでいく上で必要な要素とは何か? ビジネスとして成立するのか? ソフトウェア開発者の視点から“ロボットのある未来”を日本科学未来館(Miraikan)に企画展示された「クラタス」とともに語っていただく。



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