新型「クラウン」はハイブリッドでダウンサイジング、JC08モード燃費は23.2km/l:エコカー技術(2/2 ページ)
トヨタ自動車の新型「クラウン」のハイブリッドモデルは、排気量3.0lのエンジンと同等の動力性能を持ちながら、23.2km/l(リットル)という良好なJC08モード燃費を実現している。これは、「日本市場に最適な、ハイブリッドシステムを用いたエンジンのダウンサイジング手法によるものだ」(同社)という。
エンジンとハイブリッドトランスミッションを新開発
クラウンは、2008年5月に発表した「クラウン ハイブリッド」からハイブリッドモデルを導入している。このときは、2008年2月発売の13代目クラウンで用意したロイヤルとアスリートに加えて、よりハイエンドのハイブリッド専用モデルを追加したという位置付けだった。一方、新型クラウンでは、ロイヤルとアスリートのそれぞれにハイブリッドモデルを用意する一方で、クラウン ハイブリッドのようなハイブリッド専用モデルは存在していない。「従来のクラウン ハイブリッドは少しニッチな商品だった。新型クラウンのハイブリッドモデルは、より幅広い顧客層に訴求したい」(トヨタ自動車)という。
新型クラウンのハイブリッドモデルのパワートレインは、排気量2.5lのガソリンエンジン「2AR-FSE」とFR車専用のハイブリッドトランスミッションから構成されている。エンジンとハイブリッドトランスミッションは、それぞれ新たに開発したものだ。
エンジンの2AR-FSEは、2011年9月発表のハイブリッドセダン「カムリ」の排気量2.5lのアトキンソンサイクルエンジンをベースに開発した。FR車のクラウン向けにエンジンを縦置きできるようにした上で、2012年1月発表の「レクサスGS」の排気量3.5lエンジンなどに採用した、次世代直噴技術「D-4S」と吸排気連続可変バルブタイミングシステム「Dual VVT-i」、冷却効率を高めたクールドEGR(排出ガス再循環)システムを搭載。これらにより、最大熱効率を、同排気量のエンジンでトップクラスの38.5%まで高めた。
圧縮比も、カムリのエンジンの12.5から13まで高めている。最高出力はカムリのエンジン比で約10%増の131kW(6000回転/分)、最大トルクは約4%増の221Nm(4200〜4800回転/分)に向上した。また、次世代D-4Sを搭載するエンジンとしては、初めてレギュラーガソリンに対応したという。
ハイブリッドトランスミッションは、カムリや「プリウス」、「アクア」に搭載されているFF車向けのリダクション機構付きハイブリッドシステムをベースに、FR車向けに新たに開発した。従来のクラウン ハイブリッドは、レクサスGSや「レクサスLS」と同様に、モーターのトルクを低速走行時と高速走行時の両方で生かせる2段変速式リダクション機構付きハイブリッドトランスミッションを採用していた。新型クラウンでは、この変速機構を省くことにより、ハイブリッドトランスミッションの小型・軽量化を実現している。従来のクラウン ハイブリッドのハイブリッドトランスミッションと比べて、全長は50mm短くなり、重量は25kg軽くなった。ただし、高速域ではモーターのトルクを利用しにくくなっている。
モーターの最高出力は105kW、最大トルクは300Nmである。従来のクラウン ハイブリッドと比べて、最高出力は42kW減少しているものの、最大トルクは25Nm増えた。これによって、「低速走行時に加速性能を高められる」(トヨタ自動車)という。
二次電池パックの電池セルは、従来のクラウン ハイブリッドと同じニッケル水素電池を用いている。ただし、電池セルの搭載数を減らしており、出力電圧は288Vから230Vに減少している。
新型クラウンで、新開発のエンジンとハイブリッドトランスミッションによって得られるシステム最高出力は162kWで、排気量3.0lクラスのエンジンと同等の動力性能を実現している。JC08モード燃費は、従来のクラウン ハイブリッドの14.0km/lを大幅に上回る、23.2km/lまで向上した。
トヨタ自動車の説明員は、「新型クラウンと競合する排気量3.0lクラスの大型セダンは、動力性能と良好な燃費を両立させるために、ターボなどの過給器を搭載することで、エンジンの排気量を1.8〜2.0lクラスまでダウンサイジングしている。しかし、日本市場では、新型クラウンに採用したハイブリッドシステムによるエンジンのダウンサイジングこそが、動力性能と良好な燃費を両立させるための最適解だと確信している」と述べている。
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