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第8回 モバイルDDR前田真一の最新実装技術あれこれ塾(3/3 ページ)

実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第8回は、スマートフォンをはじめ、モバイル機器の高度化によって需要が拡大しているモバイルDDRメモリについて説明する。

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3. LPDDR、LPDDR2規格

 これまで、モバイルDDR規格は一般のDDR規格に対して数年遅れで同等の規格を制定してきました。

 LPDDR規格はDDR1規格のDDRメモリのモバイル版です。特にLPDDR2規格では、DDRメモリだけでなく、システムプログラムや定数などを格納しておくためのEPROMなどの規格を含んでいますが、ここではDDRメモリのインタフェース部だけに絞ります。

4. モバイルDDRが主流に

 これまで、モバイル機器は携帯電話、デジタルオーディオ、デジカメなど比較的小型、単機能でソフトも規模が小さく、記録用以外の使用するメモリ容量もそれほど大きくありませんでした。

 しかし、携帯がスマートフォンへと進化し、携帯でWebへのアクセスや、動画の処理など大きなメモリを必要とする用途が多くなってきました。さらにiPad(図11)が拓いたタブレット端末市場は、瞬く間にネットPCの市場を席巻し、ノートPCの領域まで広がってきました。これまで、ノートPCやネットPCはPCとしての位置付けで、機能は高く、メモリも一般のDDRメモリを搭載し、ある程度大きなバッテリを搭載して、稼働時間は数時間で良いとされてきました。

図11 iPad
図11 iPad (出典:Apple)

 それに対し、携帯機器は小型のバッテリーを搭載しながら、稼働で10時間以上、スタンバイでは日単位、週単位の稼働を要求されていました。タブレット端末は機能を絞り、液晶画面もPCよりはずっと小さいものの、これまでの携帯電子機器よりはずっと大きく、携帯電子機器とノートPCの間を埋める機器として登場しました。バッテリーのもちも、ノートPCよりはずっと長く、携帯機器並みの動作時間や待ちうけ時間が要求されています。さらに、徐々に機能を上げ、ノートPC並みの機能や、新しい電子ブックとしての機能など、モバイル機器とノートPCの両方の機能が要求されるようになってきました。

 このようなタブレットPCでは、バッテリー駆動時間を長くするためにはできるだけ、消費電力の小さなメモリ素子を使う必要があります。このため、現在のタブレットPCではモバイルDDRが多く使われています。しかし、今後、タブレットPCに現在のノートPCがもつ機能や性能が要求されると、現在のモバイルDDRでは、速度、容量が不足していることは明白です(図12)。

図12 モバイル機器も多くの高速メモリを必要とする
図12 モバイル機器も多くの高速メモリを必要とする(クリックで拡大) (ST Ericsson、CDN Live 2011.5資料より作成)

 従来は、

  • 実装するメモリの数を減らす
  • 速度を低下させる

ことを前提として、低消費電力を実現していたモバイルDDRメモリに対して、

  • 実装できるメモリの容量を増やす
  • メモリの速度を高速化する
  • 消費電力は増やさない
  • 実装面積は増やさない

というような要求が大きくなってきました。

 このため、JEDECでは新しいモバイルDDRメモリの規格作成が始まっています。


参考文献

(1)「Low Power Double Data Rate (LPDDR) SDRAM Standard」JESD209B FEBURARY 2010

(2)「Low Power Double Data Rate 2 (LPDDR) 」JESD209-2E APRIL 2011



筆者紹介

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前田 真一(マエダ シンイチ)

KEI Systems、日本サーキット。日米で、高速システムの開発/解析コンサルティングを手掛ける。

近著:「現場の即戦力シリーズ 見てわかる高速回路のノイズ解析」(技術評論社)


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