第1回 DDR4:前田真一の最新実装技術あれこれ塾(1/3 ページ)
「実装が新しい技術の普及を左右している――」。実装技術の専門誌「エレクトロニクス実装技術」で好評連載中の前田真一氏がMONOistに登場。実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する。第1回のテーマは、次世代メモリ「DDR4」だ。
本連載は「エレクトロニクス実装技術」2011年4月号の記事を転載しています。
今回から、新連載として、実装に関する新しいテーマを、それぞれ1〜2回にわたって紹介していきます。
1. DDR4の動向
少し古い話になりますが、2011年の新年早々、新聞やインターネット情報で驚くようなニュースが流れました。
2011年1月5日の報道によると、『「韓国のSamsung Electronicsが初のDDR4メモリーを開発して、2010年末、DDRコントローラメーカーに提供した」と1月4日に発表した』というものでした。今回製造したDDR4の仕様は、動作電圧1.2V、データ転送速度2.133Gbps、30nm、2GB、Unbuffered DIMMとの具体的数値まで上げての発表でした(図1)。
さっそく、Samsungのホームページ(クリックでプレスリリースのページへ)でプレスリリースの内容をみると、各マスコミの発表はだいたい同社の発表に基づくものでした。
ここで私が驚いたのは、派手にDDR4と取り上げられているものの、実際にはDDR4はまだ存在しないものだからです。
DDRメモリの規格はJEDECという組織で制定しており、これまでのDDR、DDR2、DDR3の規格はすべてJEDECから出版されています。また、DDR4についてもJEDECで何年も前から規格作成の作業が進められていますが、まだ正式規格は発表されていません。
これはSamsungのプレスリリースにも書かれていましたが、Samsungは2011年後半からサーバベンダと密接に協力してDDR4メモリ規格の確立に努力する予定である、とし、これが正式なDDR4規格に準拠したものではない、といっています。
とはいえ、実物を使って、規格委員会で機能の実装を行えば、Samsung電子の意見が強く規格に反映されることになるのは当然でしょう。
ただ、本稿ではそのような政治的なことを議論するのではなく、このように2012年には出てくるであろう新しいDDR4の姿を、現在、分かっていることから思い描いてみようと思います。
まだ最終スペックは決まってはいないといっても、ここ数年、DDR4の規格については議論されているのでJEDECのDDR4規格委員会の外にもある程度の情報は出てきています。
今回は、この2011年2月にアメリカのサンタクララで開催されたDesignConにおいて発表されたIBMの論文(※1)をもとに、その他の情報などをあわせて、現在考えられているDDR4メモリの仕様と実装に関する話題を紹介します。
参考文献 ※1. Nam Pham、Rohan Mandrekar、Nanju Na、Daniel Dreps、Lloyd Walls “Design Optimization of a DDR4 Memory Channel” 2011 DesignCon
2. 電気的仕様
電気的仕様に関しては、すでにある程度決まっていたり既定の事実となっていることと、いくつかの案があることからまだこれから議論をして最終的な仕様を決めてゆくものとに分かれます。
しかし、まだ決まっていない仕様とはいっても、いくつかの案がありそのいずれを選ぶかという程度ですから、まったく予想もしなかった新しい規格が半年から1年半くらいの間に出てくる可能性は低いと思われます。
IBMの論文では、これらいくつかの案に対してシミュレーションを行い、実現可能なのか、どちらの案の方が良いのかなどを論じています。
まずはじめに、ある程度決まっていて、今後も大きな変更がない項目を紹介します。
現在、データの転送速度は、1600Bpsから3200Bps程度までが想定されています。これは、DDRメモリ規格は常に古い規格の2倍の転送速度を制定しているので、DDR3の速度からみて、大きな変化はないでしょう。
また、これも以前から広く言われてきたことですが、電源電圧がDDR3の1.5Vから1.2Vに低下します。これは、信号の高速化とICの消費電力の低減のために、メモリの規格が1世代新しくなるたびに電源電圧の低下が図られてきたことによるものです。
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