「明確なリーダーシップが必要」、産業革新機構がルネサスの新経営体制に言及:ビジネスニュース 企業動向(2/2 ページ)
産業革新機構と顧客企業8社から、総額1500億円の出資を受けるルネサス エレクトロニクス。産業革新機構社長の能見公一氏は、出資完了後のルネサスの経営体制について、「成長戦略を進めるには明確なリーダーシップが必要になる」とコメント。M&Aなど大規模投資のために、500億円の追加投資も検討しているという。
1500億円の使い道
ルネサスは、マイコンやアナログICなどの個別製品を提案してきた「プロダクトサプライヤ」から、現在移行を進めているマイコンを軸にアナログICを一緒に提案する「キットソリューションサプライヤ」を経て、ソフトウェアまで含めた提案を行う「プラットフォームサプライヤ」になる必要があると考えている。
今回の出資で得られる1500億円は、プラットフォームサプライヤに進化する上で必要になる、「コアコンピタンスの強化」、「ソリューション提案力の強化」、「急激な市場変化に対する耐性強化」という3つの領域に分けて用いる。
まず、コアコンピタンスの強化では、研究開発投資に400億円、設備投資に200億円を費やす。マイコンの製造に適用する40/28nmプロセスの開発と設備投資を進めながら、自社の制御系IP(Intellectual Property)と、先進プロセス製品の量産パートナーであるTSMCが持つ情報通信系IPを融合させて周辺機能を充実させ、「マイコンで圧倒的トップを目指す」(赤尾氏)方針である。
信号処理などに用いる車載アナログICでは、デジタル回路部への90nmプロセスの採用により高集積化を進めるとともに、ウェハーの300mm化でコスト競争力を強化する。パワー半導体は、SiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)を用いた次世代製品の開発や、個別部品を組み合わせて多機能を1パッケージで提供するモジュール化を進める。
次に、ソリューション提案力の強化では、自動車向けで400億円、産業機器向けで400億円を投資する。それぞれの分野で、IPやソフトウェアの開発に注力し、プラットフォームサプライヤとしての事業展開を早期に行えるようにする。
最後に急激な市場変化に対する耐性強化では、経営基盤の再構築に100億円を用いる。特に、東日本大震災で那珂工場(茨城県ひたちなか市)が被災した際の教訓を生かして、今後の生産の主力となる90/40nmプロセスについて大手ファウンドリを含むマルチファブ化(多拠点生産)を実現し、顧客への安定供給体制を強化する。
SoC事業の行方は?
今回の会見では、マイコンを軸にアナログ&パワー半導体を組み合わせて高付加価値の提案を行う体制について言及があったものの、もう1つの主力事業であるSoCのことはほとんど触れられなかった。
ルネサスのSoC事業については、パナソニックや富士通セミコンダクターのSoC事業と統合して分離独立させる計画が報道されている(関連記事2)。
赤尾氏は、報道陣との質疑応答の中で、「ソリューション提案力を強化する上で必要になるSoCは強化していく。具体的には、世界トップシェアの車載情報機器向けのSoCや、産業機器向けのSoCやASICが強化対象になるだろう」と述べ、SoC事業の分離独立についてはコメントしなかった。
また、Nokiaから買収した携帯電話機向けモデムIC事業についても、ソリューション提案力の強化に必要な製品の1つとして挙げていた(関連記事3)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ルネサスは通期営業黒字を達成できるのか、鍵を握る「Wii U」
2012年度の中間決算で、1151億円もの純損失を計上したルネサス エレクトロニクス。同社は通期で営業黒字を達成すると予想しているが、主力顧客である自動車メーカーや電装部品メーカーの業績予想の下方修正が続くなど事業環境は厳しい。果たして、待望の通期営業黒字は達成できるのだろうか。 - 増資についてノーコメントのルネサス、「事業継続可能な運転資金は確保」
ルネサス エレクトロニクスは、東京都内で会見を開き、2012年度(2013年3月期)第2四半期の決算内容や、財務基盤強化の状況について説明した。産業革新機構やKKRによる増資に関する報道への質問については、ノーコメントを貫いた。 - 車載半導体 ルネサス インタビュー:SoCを分離すると顧客の期待に応えられない、3つの製品分野一体の強みを生かす
厳しい事業環境にある、半導体メーカーのルネサス エレクトロニクス。しかし、中核に位置する車載半導体事業の実力は、世界でもトップクラスだ。同社で車載半導体製品のマーケティング戦略を統括する金子博昭氏に、製品開発の方向性や、強みを生かすための施策について聞いた。