ボックス形状を押さえる設計――「これがプロの実務だぜぃ!」:甚さんの「バンバン板金設計でキャリアアップ」(7)(3/3 ページ)
板金のボックス形状設計のコツを押さえて、脱・素人! 材料選定や箱の四隅のすき間をなくす理由について、あなたは明確に答えられる?
なぜアルミ製か?
そんじゃ、図3を見ろ。展開図だぜぃ、材料を無駄なく使用しているのが分かるかぁ? あん?
甚さん! 「展開図」って何ですか?
え? えぇっ? オメェ、知らねぇのかぃ!? ……大学院ではそんなことも教えないのか。「展開図」とはなぁ、つまり、「洋服の型紙」のことよ。
甚さん!「型紙」って何ですか?
はぁ? て、てんめぇ〜! 板金の展開図も知らなきゃ、型紙も知らねぇときたもんだ。洋裁学校に通う女の子にでも聞け!エリカちゃんのお友だちによぉ〜。
甚さん! 「ゆめぴりか」って何ですか?
それは、北海道のおいし……って、コノヤロー!
板金の展開図と型紙については、良君自身に調べてもらうことにしましょう。図2の実施例を図4で見てみましょう。これは、ノートPCなどに使用される「外付けCD、またはDVDプレーヤー」の筐体です。材質は、アルミ板金で製造されています。
図4をもう一度よく見ろ! これが「なぜアルミ板金製なのか」「なぜ図2のボックス形状を採用したか」。よーく考えろ!
あっ、分かりました! 「外付け」故に、軽量化、軽量化故にアルミ材を選択したんですね。しかし、アルミ材料故に、そのぅ……
さっさと答えろ! オレサマは江戸っ子だから気が短けぇんだ!
はいぃっ! 表1は、連載『甚さんの「技術者は材料選択から勝負に出ろ!」』の内容を基に、僕が編集しました。
「3.65/0.75≒5倍」なので鋼材と比べるとアルミ材の方が高いのですが、軽量化を考えれば、それでも採用メリットの方が大きいですね。鋼材の比重は7.9、アルミの比重は2.7。つまり、アルミは鋼材の3分の1の軽さになりますからね(表1)。
「材料特性は得意中の得意」だという主席の院卒、良君が張り切って説明します。
しかし、鋼板とアルミ板の剛性を比べてみると、極端に差があることが分かります。剛性の「目利き力」である縦弾性係数と横弾性係数は以下のようになっています!
- 鋼材:縦弾性係数:211kN/mm2、横弾性係数: 79kN/mm2
- アルミ材:縦弾性係数:70kN/mm2、横弾性係数: 25kN/mm2
つまりアルミ材の剛性の弱さを構造体で補うことが、図2のボックス形状を採用した理由なのです。3次元モデラーにはできない設計です。
さすがだ! オメェのその勇姿、エリカちゃんにも伝えておくぜぃ! オメェにホレちまうかもなぁ? あん?
ムッフーッ! 早速、図2と表1を基に、CAEで分析してみましょうっ!
最後にやっとほめられた良君です。そして、前連載のタイトル『甚さんの「技術者は材料選択から勝負に出ろ!」』の意味を深く実感した良君でした。
次回もお楽しみに! また来年お会いしましょう。
Profile
國井 良昌(くにい よしまさ)
技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会、埼玉県技術士。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。
1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)をはじめとする多数の書籍を執筆。
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