ボックス形状を押さえる設計――「これがプロの実務だぜぃ!」:甚さんの「バンバン板金設計でキャリアアップ」(7)(2/3 ページ)
板金のボックス形状設計のコツを押さえて、脱・素人! 材料選定や箱の四隅のすき間をなくす理由について、あなたは明確に答えられる?
ボックス形状を設計できれば、プロの域!
板金とはなぁ、「曲げてナンボ」「絞ってナンボ」で価値を発揮するもんだ。そして、最高の価値を発揮するのが「箱型形状」だ。今から、ここにへいるぞ! あ、「ナンボ」は江戸弁じゃなくて、関西弁かぁ?
甚さんが言う「箱型形状」は、設計現場では「ボックス形状」とも呼びます。後者がメジャーでしょう。「箱そのものを形成する」のが基本です。例えば、構造力学的に強固な構造を求めるとき、「そこはボックス形状にしろ!」という具合に、設計現場では使われます。教科書には掲載されていない、重要な職人用語です。
その具体例は、第6回の「図6 板金箱の基本形」と、「図7 VTRヘッドシリンダベースに見る板金箱の応用例」と「図8 ホチキスのフレームに見る板金箱の応用例」で復習してください。
ここで甚さんから、重要なメッセージをお伝えします。
板金でボックス形状を設計できねぇヤツは、「ド素人」、もしくは「3次元モデラー」だぁ。ここが、ベテランの設計へたどりつけるか、運命の別れ道っていうもんだぜぃ!
僕は大丈夫ですっ! 第6回の図6〜図8を確認しました。図8のホチキスのフレーム構造は、実際にホチキスを購入し、分解しました。
第6回の図6〜図8の事例はどれも、「四隅にすき間があること」を認識してください。次に、「四隅のすき間をなるべくなくすテクニック」、つまり「調味料」を紹介します(図1)。
これが、バンバン板金設計の「調味料」か! 図1の左側ですが、S面は内側に倒れますが、L面はS面が内側を支持していますので、内側には倒れませんね!
その通りだ、良君。L面とS面を設計で入れ替えることもできる。機能上、内側に押される場合などで、この方式を選択しろ!
分かりました。だから「機能を考えない、造形だけの3次元モデラーは、設計者にあらず」って言ったのですね?
そうだ、今ごろ気が付いたのかぁ? さらに、図1の右側は、どの面も内側には倒れない工夫がなされていることに気付け! これは命令だぁ!
図1の注記で、「ここに穴が開く」と記述されていますが、この穴(すき間)の寸法は、第6回の図6を参照してください。
また、同じ図1の注記では「底面には、ビードや大きな穴を設けない方がよい」と記述されています。
これは、底面に平面度などの精度を求めるときの注記だ。剛性や軽量化を求めるときはウェルカムだぜぃ!
「ビード」とは「絵辞書」にあったトンネルのような絞り加工のことですね。ビードを入れるとどのくらい剛性がアップするかは、既にCAEで検証しています。僕は、CAEのプロですから!
そんじゃ、次は図2に行くぜぃ! どうだこれは、四隅を曲げ加工だけで極力すき間をなくしているぜぃ。しかもよぉ……。
あっ! 分かりましたよ。S面やL面は、押しても引いても倒れませんね!
他に気が付いたところはねぇのかい? あん?
ありません。
べらんめぇっ! あんなぁ〜、オメェよぉ、何度言ったら分かるっ! オレサマはよぉ〜……。うるぁ、酒だ、酒持ってこーい! ああ、どうしたらいいんだぁ!
良君の答えにあきれてしまった甚さん……、何だか支離滅裂になっています。
実は、このシーンに注目していただきたいのです。講師が、上司が、先導者が、さらなる理解を求めて、甚さんのような質問を部下や受講者にすると、深く考えずに、イージーに、「分かりません」とか「ありません」とか返ってくる……。
まるで、
- 「もう、いいよ……」
- 「そんなのどうでもいいよ……」
- 「興味ないよ……」
とでも言いたいかのように。
それが、最近の日本企業の技術者たちです。しかも、仰天すべきは……、若手技術者というよりも、中堅技術者以上の年齢層に見られる傾向ということです。
やっぱなぁ、CAEばかりにこだわると、オメェみたいな技術者が量産されちまう。一流のCAE技術者はなぁ、詳しくなくてもいいから、モノづくりの基本的な仕組みぐれぇ勉強しろってんだぁ。じゃねぇとよぉ……。
「じゃないと、一流のCAE技術者にはなれない」「一流のCAEとは、コンサルタントの役を成さなくてはならない」「コンサルテーションには浅くてもいい、広域の知識と経験が必要だ!」って言いたいんでしょ?
分かってるんなら、もっと考えろーいっ!!
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