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オルタネータが生み出す電力がなければ自動車は走れないいまさら聞けない 電装部品入門(3)(3/3 ページ)

現代の自動車を走らせるためには電力が必要だ。この電力を生み出す電装部品がオルタネータである。今回は、オルタネータが自動車で果たしている役割や、その内部構造について解説する。

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全波整流回路

 ステータコイルに発生した三相交流を全て直流へと整流するために、最低6個のダイオードから構成される全波整流回路がステータコイルの下流に組み込まれています。

 ご存じのようにダイオードは一方向にしか電流を流さない性質を備えており、三相全波整流回路はその特性を利用した配置になっています。


ダイオードとICレギュレータ
ダイオードとICレギュレータ

 次に示す図1は、三相交流を全波整流する回路について簡素化して示したものです。

全波整流回路の仕組み
図1 全波整流回路の仕組み II⇒I間に高い電圧が発生した状態を示している。

 三相のステータコイル(以下、三相線)をそれぞれI〜IIIとし、6個のダイオードをそれぞれ①〜⑥とします。また、電気負荷は自動車を走行させるに当たって必要となる電装部品を、右端の電源は12V鉛バッテリーを表しています。この回路内ではローターコイルが示されていませんが、常にステータコイル内で回転し発電している状態とします。

 この時、電流は唯一通過できるダイオード①を通って、電気負荷に流れてダイオード⑤に戻ってきます。さらに電気負荷の抵抗が少ない状態、つまり電装部品で消費する電力が少ない場合は鉛バッテリーの電圧(12V)よりも高い電圧になっていますので、鉛バッテリーのプラス端子へと電流が“逆流”して充電電流となります。

 一方、図2では、III⇒I間に高い電圧が発生した状態を表しています。先ほどと同様に、唯一通過できるダイオード①を通って電気負荷を経由し、ダイオード⑥に戻ってきます。

全波整流回路の仕組み
図2 全波整流回路の仕組み III⇒I間に高い電圧が発生した状態を示している。

 これらのプロセスは、III⇒II(②⇒⑥)、I⇒III(②⇒④)、I⇒III(③⇒④)、II⇒III(③⇒⑤)と続き、図1で示したII⇒Iへと戻ります。

 このように、回路としてみると、電流の流れる方向は三相交流発電なので順次入れ替わりますが、電気負荷に流れる電流の向きは全波整流回路によって一定になります。

ボルテージレギュレータ

 先ほども少し触れましたが、オルタネータの発電能力はローターコイルから発生する磁束(スリップリングからの励磁電流)とステータコイルが交差する速さに比例します。つまりエンジン回転数が高いほど、発電能力は大きくなります。さらに、ローターコイルの磁束を強くすることでも、オルタネータの発電能力を向上する効果が得られます。

 自動車用オルタネータの起電力が、目まぐるしく変化するエンジン回転数ならびに電気負荷によって変化してしまうと、定格電圧が12Vで設計されている電装部品を正常に作動させることができません。つまり、出力電圧を可能な限り一定に制御するためのボルテージレギュレータが必要なのです。

 自動車用オルタネータの電圧制御は、エンジン回転数や電気負荷の変化に応じてローターコイルに流れる電流(フィールド電流)の調整によって実現されています。

 調整は至ってシンプルで、エンジン高回転時や軽負荷時のように出力電圧が定格値の12Vを超えそうな場合にはフィールド電流を減らし、逆の場合はフィールド電流を増やします。

 フィールド電流の調整を行うボルテージレギュレータには、接点式やツェナーダイオードを用いたIC式などが知られています。しかし最近の自動車では、リアルタイムに計測した鉛バッテリーの電圧はもちろん、実際の回路に流れている電流量など、さまざまなセンサーから収集した情報を使って、ECU(電子制御ユニット)で算出した最適なフィールド電流値に従って電力を供給できるようになっています。


 次回は、エコカー時代に対応した、オルタネータの最新開発事例について紹介します。お楽しみに!

プロフィール

カーライフプロデューサー テル

1981年生まれ。自動車整備専門学校を卒業後、二輪サービスマニュアル作成、完成検査員(テストドライバー)、スポーツカーのスペシャル整備チーフメカニックを経て、現在は難問修理や車両検証、技術伝承などに特化した業務に就いている。学生時代から鈴鹿8時間耐久ロードレースのメカニックとして参戦もしている。Webサイト「カーライフサポートネット」では、自動車の維持費削減を目標にしたメールマガジン「マイカーを持つ人におくる、☆脱しろうと☆ のススメ」との連動により、自動車の基礎知識やメンテナンス方法などを幅広く公開している。



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