自動車の中核を担うカーエレクトロニクス、広がり続ける半導体メーカーの役割:オートモーティブワールド2013 リポート(1/3 ページ)
カーエレクトロニクスが自動車の中核を担うと言われるようになって久しい。2013年1月16〜18日、東京ビッグサイトで開催された自動車関連技術の展示会「オートモーティブワールド 2013」では、国内外から数多くの半導体メーカーが出展した。本稿では、これらの半導体メーカーの展示で記者が興味深いと感じたものを取り上げる。
2013年1月16〜18日、東京ビッグサイトで自動車関連技術の展示会「オートモーティブワールド 2013」が開催された。オートモーティブワールドと聞いてもピンと来ない読者の方が多いかもしれないが、2009年1月に初開催された「国際カーエレクトロニクス技術展」を中核に、2010年以降に順次加わった「EV・HEV駆動システム技術展」や「クルマの軽量化展技術」をまとめた総称である。ちなみに、今回も「クルマのITソリューション展」が新設されている。
カーエレクトロニクスが自動車の中核を担うと言われるようになって久しい。オートモーティブワールド 2013にも、カーエレクトロニクスの進化を支えてきた半導体メーカーが、国内外から数多く出展した。本稿では、ルネサス エレクトロニクス、日本アルテラ、リニアテクノロジー、インターシル、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン、ams、ローム、インフィニオン テクノロジーズ ジャパンといった半導体メーカーの展示の中で記者が興味深いと感じたものを紹介しよう。
なお、今回が初出展となったソニーとクアルコムの展示や、STマイクロエレクトロニクスブースで展示されていた船井電機の3Dバーチャル入力デバイスについては、以下に挙げたオートモーティブワールド 2013の既報を参照していただきたい。
車載情報機器のセキュリティを守れ!
ルネサス エレクトロニクスは、車載情報機器向けセキュリティソリューションのデモンストレーションを行った。
現在、通信モジュールやスマートフォンなどを介して、車載情報機器を通信接続する機会が増えており、車載情報機器自身や他の車載システムにウイルスやマルウェアを送り込むなど悪意のある攻撃が発生する可能性もある。同社のセキュリティソリューションを使えば、暗号回路と耐タンパ設計を組み込んだセキュアマイコンと、日本ラッドのミドルウェアによって、不正なアクセスを防ぐことができるという。
デモでは、東京、ロンドン、ニューヨーク、上海の4カ所で動作している車載情報機器が、同じサーバに接続してサービスを利用しているという状況を模擬していた。東京の車載情報機器はセキュアマイコンとプロセッサ上で動作しているSSLソフトウェアの両方を使って、二重のセキュリティを確保している。これに対して、ロンドンはセキュアマイコンのみ、ニューヨークはSSLソフトウェアのみを使用しており、上海はどちらも使用していない。セキュリティの高さの順に並べると、東京、ロンドン、ニューヨーク、上海となる。
ルネサスの車載情報機器向けセキュリティソリューション。写真の下側には、左から、東京、ロンドン、ニューヨーク、上海の4カ所で動作している車載情報機器を模擬したボードが置かれている。写真の上側にある2台のノートPCは、左側が正規のサーバ、右側が偽サーバという設定。SSLソフトウェアを使っているニューヨークの端末は、偽サーバと接続させられている。(クリックで拡大)
ニューヨークよりロンドンの方がセキュリティが高い理由は2つある。1つは、セキュアマイコンが、車載情報機器とサーバの間でやりとりするデータ(速度や走行距離、残燃料など)を個別に暗号化できることだ。もう1つは、車載情報機器に、偽サーバに接続させるようなウイルスやマルウェアが侵入した場合でも、セキュアマイコンの機能によって接続を防げることである。「SSLソフトウェアは、通信そのもののセキュリティを確保できるものの、車載情報機器にウイルスやマルウェアが侵入した場合には、対処のしようがない。車載情報機器のソフトウェアとは別にハードウェアとして暗号回路を実装することになるセキュアマイコンは、そういった場合でもセキュリティを守れる」(ルネサス)という。
「Cyclone IV」にステレオカメラのアルゴリズムを実装
日本アルテラは、東京工業大学准教授の実吉敬二氏の研究室(実吉研)が、同社の普及価格帯のFPGA「Cyclone IV」を使って開発したステレオカメラシステムを披露した。
使用したCyclone IVは、ゲート数が約60万個の「55KLE」という品種である。「2個のカメラモジュールの視差情報を使って対象までの距離を導き出すステレオマッチングのアルゴリズムをFPGAに実装しようとすると、一般的にはゲート数が200万〜300万個必要になると言われている。実吉先生が開発したアルゴリズムは、約10年の研究成果もあって、無駄のないアルゴリズムになっており、55KLEにも実装できたようだ」(日本アルテラ)という。
日本アルテラが展示したステレオカメラシステム。写真の右上にあるステレオカメラを使って、展示の近くに集まっている参加者までの距離を色で分けて表示している。ステレオカメラに対して近いと赤色、遠いと緑色や青色で表示される。(クリックで拡大)
展示したステレオカメラシステムは、Aptina Imagingの撮像素子(752×430画素)を搭載する2個のカメラモジュールからの映像を60フレーム/秒で入力して、実吉研のアルゴリズムを実装したCyclone IVで処理。4msのレイテンシで、2〜100mの範囲で撮影した対象物までの距離を検知できる。
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