検索
連載

オルタネータが生み出す電力がなければ自動車は走れないいまさら聞けない 電装部品入門(3)(2/3 ページ)

現代の自動車を走らせるためには電力が必要だ。この電力を生み出す電装部品がオルタネータである。今回は、オルタネータが自動車で果たしている役割や、その内部構造について解説する。

Share
Tweet
LINE
Hatena

オルタネータの充放電バランス

 オルタネータは走行中に動作している電装部品への電力供給とともに、エンジン始動を筆頭とする鉛バッテリーが消費してしまった電力の充電を主な役割としています。

 オルタネータはエンジン動力によって回転することで発電していますので、エンジンからの回転力が得られないエンジン始動時には電力を供給することができません。つまりエンジン始動時に必要な大電流は、車両に搭載している鉛バッテリーから供給する必要があります。

 通常走行時は、「オルタネータによって作られた電力>車両の走行に必要な電気負荷」となっていますので、余剰分の電力は鉛バッテリーの充電に使用されます。

 鉛バッテリーが最も電力を消費するのはスタータによるエンジン始動時です。走行中の充電によって、最低でもこのエンジン始動時に費やした消費電力を補う必要があります。ここでしっかりと充電できるような走行をしておかないと、鉛バッテリーの容量を回復する機会がありませんので、すぐにバッテリー上がりとなってしまいます。

 もちろん、エンジン始動時以外にも、鉛バッテリーの電力が消費されるタイミングが存在します。年中無休で24時間走行し続けている車両というのは一般的に考えられませんので、エンジン停止状態(駐車中など)で消費する電力も存在するのです。その代表が、本連載第2回の「エコカーとともに進化する鉛バッテリー」で紹介した暗電流です。

 故障のない正常に動作している車両でも、1時間当たり5〜50mAほどの暗電流によって、鉛バッテリーから電力を消費しています。もし、仮に1週間に1回しか走行しないとすると、前回の走行を終えてから再度エンジンを始動するまでに、「24時間×7日×30mA(暫定値)=約5Ah」もの電力を消費します(イメージをつかんでもらうための単純な計算値です。鉛バッテリーの容量として表記されている5時間率容量とは異なります)。

 この暗電流に、鉛バッテリー自身の自己放電も加味すれば、頻繁に走行しない自動車に搭載されている鉛バッテリーが極めて過酷な環境に置かれていることが理解できるのではないでしょうか。もし、週に1回の走行が近所のスーパーに買い物に行くだけ……となりますと、早期の鉛バッテリー交換が必要になるのは言うまでもありません。

 ここまで書いた内容は、あくまでも「オルタネータによって作られた電力>車両の走行に必要な電気負荷」という前提条件に沿ったものです。しかし、真冬の夜間に高速道路で渋滞中というさらに過酷な条件下(ヘッドランプ、ワイパー、カーエアコン、カーオーディオ、ガラスの曇り止めヒーターなどを使用しながらアイドリングしている状態)であれば、「オルタネータによって作られた電力<車両の走行に必要な電気負荷」という逆の状態、つまりオルタネータによる発電量を上回る電力が必要になります。

 この時もエンジン始動時と同様に鉛バッテリーからの電力供給(持ち出し)が行われます。ただし、鉛バッテリー容量には限界がありますので、持ち出しが発生するような走行状況に遭遇した時は注意が必要です。持ち出しによって鉛バッテリーが上がってしまうと、エンジンの再始動ができないのはもちろん、最悪の場合はエンジンストール(エンスト)に至る可能性もあり大変危険です。

 アイドリング時でも一定の電気負荷に耐えられる発電量を備えたオルタネータもありますが、状況によっては鉛バッテリーからの持ち出しは避けられません。これは、オルタネータの発電量が回転数に比例しているという特性が根底にあるためであり、後述する燃費への影響も含めて避けられない事実だと認識してください。

オルタネータの構造

 さて、ここからは、オルタネータの構造について見ていきましょう。

交流発電機

オルタネータ内部に組み込まれているローター
オルタネータ内部に組み込まれているローター(クリックで拡大)

 オルタネータの構造は、交流発電機と整流器に大まかに分けることができます。

 交流発電機として機能する部品はローターとステータから構成されており、エンジンによって駆動されているのはローターです。

 ローターは、ローターコア、ローターコイル、スリップリングなどで構成されており、ローターシャフトの末端にあるプーリがベルトを介してエンジンからの動力を受けて回転します。発電に伴って生じる熱による温度上昇をできる限り抑えるために冷却フィンが取り付けられています。

 ローターの中央にローターコイルが巻かれ、その両側から向かい合うようにして6〜8個の爪型をしたローターコアが組み合わされています。ローターコイルを励磁させるための電流は、ブラシを介してスリップリングから供給されます。

スリップリングからブラシを取り外した状態
スリップリングからブラシを取り外した状態(クリックで拡大)

 ブラシの背面にはスプリングが組み込まれており、スリップリングに対してスプリング力で常に圧着させています。ブラシとスリップリング間では常に摩擦が生じているので、ブラシが摩耗限界に達した時点でローターコイルへの電力供給が断たれ、オルタネータは発電機としての機能を失います。

 一方のステータは、ステータコアとステータコイルで構成されており、ステータコアに設けられたいくつもの溝にステータコイルが巻き付けられています。

 ステータコイルは、一見しただけでは分かりませんが三相交流という名の通り、3個の独立したステータコイル(回路)が巻かれています。

 ステータの内側にある励磁されたローターが回転することで、ローターコアから出た磁束がステータコイルと交差し、電磁誘導によって電流が発生します。

オルタネータのステータステータの内側を励磁されたローターが回転 左の写真は、オルタネータのステータ。右の写真は、ステータの内側を励磁されたローターが回転するイメージ。(クリックで拡大)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る