連載
グローバル企業として生き残るには――ボッシュ栃木工場に見るニッポンクオリティ:小寺信良が見たモノづくりの現場(2)(4/5 ページ)
自動車の品質とコストを支えているのは誰か。多くの部分を下支えしているのが部品メーカーだ。自動車部品メーカーの1つ、ボッシュ。その栃木工場の工夫を、小寺信良氏の目を通して語っていただいた。品質向上への努力とはどのようなものなのかが分かるだろう。
作業者の立ち位置も重要
マシニングセンター自体は一般的なものだが、作業者の立ち位置にあるトレイは栃木工場専用に開発されたものだ。人が立つ部分がえぐられて、周りを囲むようになっている(図10)。形状の工夫により、部材交換時に油などが床に落ちないようになる。
さらに切削時のクーラントや切り粉は、床下のトレンチ(溝)に流れるようになっており、床の上を流れる事はない(図11)。これらは集中分離室に集められ、そこで分離される。クーラントは再利用し、切り粉は業者に戻してリサイクルする。
なぜエアーガンを禁止したのか
栃木工場では、圧縮空気の力でゴミを吹き飛ばすエアーガンを一切使っていない。エアーガンを使うと、対象物はきれいになるが、ゴミや油が周りに飛んで、汚してしまうからだ。その代わり、強力な吸気のワンダーガンを使って、吸い取っていく方式に変更した。
あまりにも不良品が出ないことにも弊害がある。品質検査のクオリティが保てなくなることだ。そこで定期的に不良検査の出題品を出して、検査者をテストしている(図12)。これで間違いを見つける感覚を取り戻してもらうのである。
大抵1カ所のミスは発見できるが、1つの個体で2カ所、3カ所ミスがあるものは、その部分を見逃してしまうこともある。これをクリアした人のみ、現場に出てもらうのだという。
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