検索
連載

グローバル企業として生き残るには――ボッシュ栃木工場に見るニッポンクオリティ小寺信良が見たモノづくりの現場(2)(3/5 ページ)

自動車の品質とコストを支えているのは誰か。多くの部分を下支えしているのが部品メーカーだ。自動車部品メーカーの1つ、ボッシュ。その栃木工場の工夫を、小寺信良氏の目を通して語っていただいた。品質向上への努力とはどのようなものなのかが分かるだろう。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

改善案がなくてもよい

 「我が課の悪さ、見える化」ボードも面白い取り組みだ。ここには従業員が投稿した、ライン内にある問題点が張り出されている(図6図7)。環境改善のために多くの工場で採用されているものだが、従来は問題点と改善提案が一枚の紙にセットになっていた。しかしそれだと、改善案が思い付かない場合は、問題点も上がってこない。



図6 各課の問題点を列挙した「我が課の悪さ、見える化」ボード (クリックで拡大)

図7 問題点が細かく記されている (クリックで拡大)

 そこで、改善案を出すのは自分じゃなくてもいい、というルールに変えた。問題点に対して別の人が改善案を出し、実行して効果があったら、問題点を挙げた人が改善策を評価する。満足度を測定することで、さらに改善に対するモチベーションが上がっていくという。

 人間関係という面では、従来報告は上長に上げるという方式であったが、それだと上司と部下だけの狭い関係の中で完結してしまう。だがボードによって全員に広く問題点と改善策の情報を共有することで、横方向にも人間関係が拡がるというメリットがある。

諸悪の根源「コンタミ」がどうしても残ってしまう

 「コンタミ」とは、コンタミネーション(Contamination)のこと。異物混入という意味である。現代の工場では、工作機械の自動化や工程の合理化により、人的なミスによる不良の発生率は問題にならないレベルになってきている。しかし完全に不良がゼロレベルにならないのは、異物の混入が工作精度を下げる原因となるからである。切削の場合は切り粉の混入や油の飛沫による汚れが原因だ。栃木工場では1993年から、コンタミ撲滅の活動を開始、現在は第5期の活動を迎えている。

 例えば素材を取り付けて6面の穴あけ加工をするマシニングセンターという機械では、穴の径に応じてオートチェンジャーがドリルビット(ドリルの先端部の部品)を交換する。この際、前の工程で発生した切り粉が主軸のところに挟まっていると、ドリルピットがわずかに斜めに付いてしまう。

 そうなると回転しても偏芯しているので、穴が規格よりも大きくなってしまい、不良ができる。「チップインスピンドル」(Chip-in-Spindle)という問題だ。本来ならば、切削時に使用する冷却液(クーラント)の噴出によって切り粉がきれいに洗い流されるべきなのだが、これが均一に掛からないために切り粉が残ってしまうことが、写真解析によって分かった(図8)。

 そこで2004年よりクーラントの噴出を制御する主軸クーラントノズルの改良に取り掛かり、11世代目の改良で初めて月間不良ゼロを達成することができた。ただ、それでもまだ完全ではなかったため、現在はさらに改良された12世代目の主軸クーラントノズルが付けられている(図9)。


図8 これがオリジナルのクーラントノズル

図9 11世代に渉って改良を続けた結果、このような形状に (クリックで拡大)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る