爆発までの40分間で小惑星の裏側に退避せよ! 〜インパクタの役割と仕組み【後編】〜:次なる挑戦、「はやぶさ2」プロジェクトを追う(5)(3/3 ページ)
はやぶさ2のターゲットとなる小惑星「1999JU3」の表面に、人工クレーターを作り出す装置「インパクタ」。それが実際にどのように使われるのか、今回は、小惑星近傍での“運用”に焦点を当ててみたい。
クレーターを目指してタッチダウン
ところで、「はやぶさ2」には、着地の際の目印となる「ターゲットマーカー」が5個搭載される。3個搭載していた初代は、結局、イトカワの表面に1個しか投下していない。なぜ、増えているのだろうか。
実は、これにはインパクタのミッションが大きく関わっている。
「はやぶさ2」では、衝突体で生成した人工クレーター付近へのタッチダウンを狙っている。クレーターの大きさは数m程度しかないので、そのためには、初代以上の精度で、狙った地点に着陸する技術が必要になる。佐伯助教は「われわれはこれを“ピンポイントタッチダウン”と呼んでいる」と説明する。
このピンポイントタッチダウンでは、「複数のターゲットマーカーを使って、降りていく位置を追い込むように誘導しようと考えている」(佐伯助教)という。最初に落としたターゲットマーカーを目印にしてクレーターの位置を確認。2個目はその中間を目指して投下する。こうして3個ほど使えれば、クレーターのそばに落とせて、そこに降下できるだろう、というわけだ。
「はやぶさ2」では最大3回のサンプル採取が可能であるが、ターゲットマーカーは、まず通常の2回のタッチダウンで2個、そして最後のピンポイントタッチダウンで残りの3個を使う――。そんなシナリオにも対応できるよう、全部で5個搭載されているのだ。(次回に続く)
筆者紹介
大塚 実(おおつか みのる)
PC・ロボット・宇宙開発などを得意分野とするテクニカルライター。電力会社系システムエンジニアの後、編集者を経てフリーに。最近の主な仕事は「人工衛星の“なぜ”を科学する」(アーク出版)、「小惑星探査機「はやぶさ」の超技術」(講談社ブルーバックス)、「宇宙を開く 産業を拓く 日本の宇宙産業Vol.1」「宇宙をつかう くらしが変わる 日本の宇宙産業Vol.2」(日経BPマーケティング)など。宇宙作家クラブに所属。
Twitterアカウントは@ots_min
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