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爆発までの40分間で小惑星の裏側に退避せよ! 〜インパクタの役割と仕組み【後編】〜次なる挑戦、「はやぶさ2」プロジェクトを追う(5)(2/3 ページ)

はやぶさ2のターゲットとなる小惑星「1999JU3」の表面に、人工クレーターを作り出す装置「インパクタ」。それが実際にどのように使われるのか、今回は、小惑星近傍での“運用”に焦点を当ててみたい。

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インパクタの破片から退避せよ!

 「はやぶさ2」では、インパクタの爆発から身を守るために、初代にはなかった特殊な運用が必要になる。それがここで説明する「退避マヌーバ」である(マヌーバ=エンジンを噴射して軌道を変更すること)。

 インパクタには大量の爆薬が搭載されており、衝突体を発射した瞬間、インパクタ自体も爆発して粉々になってしまう。この四散した破片が、探査機に衝突したら破損や故障の原因にもなりかねないため非常に危険だ。厳しい重量制限から、シールドのようなものを搭載することはできないため、探査機本体を守るためには、十分に離れるか、何かの陰に隠れるしかない。

 このとき、「はやぶさ2」の近くには“盾”として最適な、大きな物体が存在する――。そう、それは小惑星そのものだ。

 退避マヌーバとは、インパクタが爆発するまでの40分間で、1999JU3の裏側の“安全地帯”まで移動する運用のことである。下図が示すように、小惑星の裏側であれば、インパクタの破片(赤線)からも、そして衝突体の命中時に小惑星表面から噴出する高速イジェクタ(緑)からも身を守ることが可能だ。

退避経路
「はやぶさ2」の退避経路(黒線)。1999JU3の裏側に移動して、危険なデブリやイジェクタを回避する(提供:佐伯孝尚助教)

 探査機はインパクタの分離後、小惑星を回り込むように横方向へ移動。そこで、イジェクタを撮影するための小型カメラ()を分離してから、小惑星の裏側へと退避する。上図において、小惑星を周回するように飛んでくる低速イジェクタ(青線)もあるが、これは小惑星から十分離れることで回避できる。

分離カメラ「DCAM3」を切り離す
退避の途中で、分離カメラ「DCAM3」を切り離す。こういったシーケンスを自動でこなす必要がある(提供:佐伯孝尚助教)
※注:この小型カメラは、小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」で開発された分離カメラシステム「DCAM1」「DCAM2」をベースとしたもので、「DCAM3」と呼ばれている。このDCAM3については、またあらためて取り上げたいと思う。


 このように書くと簡単に思えるかもしれないが、これを全て自律で行わなければならないというところに難しさがある。もし何かに衝突すれば、致命的な事態になりかねない。事前にさまざまなリスクを検討しておく想像力が必要だ。

 退避時間については「40分間」と書いたが、実はこれも確定ではない。退避時間がもっと短ければ累積誤差は小さくなるが、移動速度を上げる必要があるため、探査機の燃料を多く消費する。逆に、退避時間が長ければ燃料を節約できるが、誤差が大きくなる。もし、1999JU3に到達した時点で燃料に余裕があれば、もっと時間を短くする可能性はある。

 インパクタには通信系がないため、点火までの時間はあらかじめタイマーにセットしておくことになるが、これは現地での書き換えが可能だ。1999JU3の詳細は行ってみないと分からないということもあり、タイマー時間や分離高度の変更など、なるべく柔軟な運用ができるよう考えられている。

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