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スマートデバイス三国時代、ハードウェアメーカーが生き抜く道はどこか本田雅一のエンベデッドコラム(16)(2/3 ページ)

スマートフォン/タブレット端末が引き起こした変化の波は、これまでの製品作りのルールを大きく変えようとしている。Apple、Google、Microsoftの製品戦略から、将来、ハードウェアメーカーが担うべき役割を模索する。

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Googleが求めるのは多様性か、あるいは……

 一方、Googleはこれまで、“シンプル化”が進行していくスマートデバイスの本質に反し、“多様性”を求めてきた。今でこそ、Google自身が多様化し過ぎてしまったAndroid搭載端末について問題視しているが、これは、当初のGoogleが自ら求めた結果であるといえる。

 2012年5月にWiredは、“あるAndroidアプリをダウンロードした端末の種類を調べたところ、その機種数が3997にも上った”という記事を掲載している(参考記事:Wired)。しかも、画面解像度は、主なものだけで13種類、さらに数十種類のあまりなじみのない画面解像度の端末も存在していたようで、上位25機種を合計しても過半数に届かないという。より高解像度なディスプレイが登場している今、そして、中国をはじめとする新興国市場での低価格スマートフォンの伸びなどを考えると、さらに種類は増えていると考えられる。この“開発ターゲットのフラグメンテーション(断片化)”が、アプリ開発者にとって大きな問題になっていることは、読者の皆さんもご存じのことだろう(なお、参考に挙げたWiredの記事にはスマートフォンだけでなく、タブレット端末の数も含まれている)。

 また、断片化の進行は、アプリの開発、互換性の確保を難しくするだけでなく、ある程度以上の数をこなせるトップメーカーでなければ、ハードウェアで利益を出せないという構造を生み出している(実際、Android搭載端末で大きな利益を出せているのは、Samsung Electronicsぐらいだろう)。

 こうした断片化のリスクと引き替えに、Androidはハイエンドからローエンドまで、幅広い品数をそろえ、スマートフォン市場で最も多くのシェアを獲得した。米調査会社ガートナーが発表した2012年夏(7〜9月期)の世界シェア調査結果によると、iPhoneの世界シェアが13.9%にとどまるのに対し、Android搭載スマートフォンは72.4%。そのうち、Samsung Electronics、ソニー、HTCのトップ3社だけで約40%を占めている。統計に表れていない数字まで含めると、その可能性は計り知れない。

 Androidの場合、構造的にハードウェアでの利益は上げにくいが、“広告媒体”としてのスマートフォンを考えた場合、Googleの思惑通り、世界中のユーザーにGoogleのソフトウェアで動作する、最も身近なディスプレイを届けることに成功している。ただ、Googleにとって誤算だったのは、市場の断片化の進行度合いが予想以上だったことだろう。

 2012年になってGoogleは、開発標準機に与えてきた「Nexus」ブランドを冠した3つの新しい標準機を続けざまに発表した。これは、ベースとなる枠組み(シャシースペック)をきちんと定義して、製品クラスごとの“中心点”を定めるためだ。まず、Googleは「Nexus 7」を開発者イベントのGoogle I/O 2012で発表し、その後、10月29日に、10インチクラスのタブレット端末「Nexus 10」と、スマートフォン「Nexus 4」を発表しているが、これら製品の位置付けは、以前と比べて明らかに変化している。

 これまでNexusブランドの製品は、主に開発者を対象に販売してきた。世界的にも出荷量はわずかで、Androidを使うハードウェアメーカーとの摩擦を避けてきた。ところが、Nexus 7の登場以降、GoogleはNexusの販売対象を広く一般層にも広げている。もっとも、スマートフォンのNexus 4だけを見ると、LTEモデルをGoogleは用意しておらず(LTEをサポートするには、“各国の周波数に対応しなければならず、複数モデルを用意しなければならないから”かもしれない)、ハードウェアメーカーとは競合しない。

Google Nexus 7/Nexus 10
GoogleがNexusブランドで展開するタブレット端末「Nexus 7」と「Nexus 10」

 しかし、タブレット端末であるNexus 7/Nexus 10に関しては、携帯電話網に接続できるセルラーモデルは用意していないものの、価格面、スペック面でハードウェアメーカーと正面からぶつかり、より進んだスペックで投入されている。こちらは開発標準機というよりも、“業界標準を定めよう”という意思を感じる。

 スマートフォン市場への浸透が進み、台数シェアでAppleを圧倒する数字になったGoogleのAndroidだが、タブレット端末市場では苦戦続きで、シェアは1けた台にとどまっていた。この台数シェアの低さ故に、タブレット端末の画面サイズに最適化されたアプリを増やせない……、よって消費者にもタブレット端末を訴求しにくい……という悪循環が続いていた。

 Nexus 7/Nexus 10の存在は、そうした状況にクサビを打ち込み、Android搭載タブレット端末の市場を構築していこうという意思の表れなのだろう。最終的にタブレット端末分野におけるAndroid採用が増えてくれば、Nexusの役割も自然に変化するものと思われる。

 ただ、Nexus 7/Nexus 10が示す、2種類の標準的な画面サイズとシャシースペックを基準に最新OSの機能が定義され、さらにタブレット端末向けのアイデアが次々と最新のAndroid OSに盛り込まれていくという状況に、消費者は敏感に反応している。ソフトウェアが製品の価値を大きく左右するスマートデバイスにおいて、最新版のソフトウェアが使え、価格面でもスペック面でも魅力的な製品は、他には換えがたいものがある。もっとも、Google自身がハードウェア販売網を世界中に構築し、店頭を含めて各国で販売していくとは考えにくい。対iPadで苦戦している中、今は、Android搭載タブレット端末市場を立ち上げるために、“畑を耕している状況”といえるだろう。

 だが、Nexus 7の状況を見てみると、プラットフォームの断片化防止対策として開発標準機をうまく機能させることもできそうだ。なぜなら、Nexus 7がミニタブレット端末の分野でヒット製品になったことで、Nexus 7の仕様がメインストリームになったからだ。Nexus 10も発表されている価格やスペックからすると、開発標準機以上の存在感を示す可能性がありそうだ。

 こうした戦略で自らが招いた断片化を防ぐことができれば、上位モデルをパートナーと共同で定義して市場を作り、その後、シェアの数字を引き上げるための多様化部分だけをハードウェアメーカーに任せる、といった方針に転換してもおかしくはない。前述の通り、2011〜2012年は、Nexusの位置付けが変化した年といえる。2013年以降、これがどうなっていくのか、関連メーカーは注視が必要だろう。

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