増資についてノーコメントのルネサス、「事業継続可能な運転資金は確保」:ビジネスニュース 企業動向(2/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクスは、東京都内で会見を開き、2012年度(2013年3月期)第2四半期の決算内容や、財務基盤強化の状況について説明した。産業革新機構やKKRによる増資に関する報道への質問については、ノーコメントを貫いた。
業績予想は据え置きも、下振れリスク大
2012年度通期の業績予想は、2012年8月2日に発表した、売上高8680億円、営業利益210億円、経常利益100億円、純損失1500億円から変更はない。ただし、欧州の債務・金融問題の長期化や、新興国の景気減速、日中関係の悪化による需要への影響から、「下振れするリスクが顕在化しつつある」(佐川氏)という。
第2四半期の売上高増加に貢献した、アミューズメント向けSoCの大型カスタム案件は、下期も同程度の規模で貢献すると想定している。同氏は、「クリスマス需要に向けた市場の動きが全体的に鈍いこともあり、想定通りに進まない可能性もある」と述べている。
また、100%子会社のルネサス モバイルが展開する携帯電話機向けモデムICについては、製品評価段階まで含めた採用件数が、累計で20件まで増えたことが明らかになった。
グローバル従業員数は約3万人へ
ルネサスは、8月2日に発表した収益基盤強化策に従い、10月末付けで約7450人という規模で早期退職制度を実施する(関連記事3)。これにより、同社のグローバルの従業員数は、2012年9月末の約4万1900人から約3万4450人にまで減少する。約7450人の65%は生産部門の人員である。また、この約7450人には、今後3年間で譲渡や閉鎖が予定されている工場から申し込みのあった約1000人が含まれている。
8月2日の発表では、早期退職制度以外に、3年間かけて進める工場の譲渡や閉鎖により5千数百人程度を削減する方針が示されている。これらの工場から既に約1000人が早期退職に応募しているため、2014年度末までの人員削減の規模は4千数百人程度になる。そして、2014年度末には、グローバルの従業員数は約3万人まで絞り込まれることになる。
同社は、今回の早期退職制度の実施で約530億円の人件費削減効果を見込んでいる。この数字から、2014年末までに4450人が削減された場合の人件費削減効果を単純計算すると、約315億円になる。つまり、2014年度末には、これらの人件費削減効果によって、2011年度と比べて営業損益を約845億円改善できる可能性があるわけだ。
しかし、2011年度通期の営業損失は568億円なので、人件費削減効果では277億円の営業利益を生み出すだけにとどまる。8月2日の発表で掲げた、2014年度の営業利益率目標である10%以上を達成するには、2014年度の売上高が2011年度と同程度と考えれば880億円以上の営業利益を稼ぎ出す必要がある。人件費削減効果で得られる277億円との差額は約600億円。残り2年半で、約600億円もの営業利益を積み増せるような体制を構築するには、さらなる構造改革を急ピッチで進める必要があるだろう。
関連記事
- ルネサスが収益基盤強化策を発表、2014年度の営業利益率は10%以上に
ルネサス エレクトロニクスが収益基盤の強化策を発表した。ホームマルチメディア(デジタル家電)向けSoC(System on Chip)の新製品開発中止や、国内生産拠点再編の詳細決定が中心となっている。これらの施策により、2014年度に営業利益率10%以上の達成を目指す。 - ルネサスの2011年度売上高は前年比23%減、「利益確保を重視した事業計画を策定中」
ルネサス エレクトロニクスの2011年度決算では、東日本大震災、タイの洪水、欧州と中国を中心とする市況悪化などにより半導体売上高が前年度比23%減の7860億円に落ち込んだ。同社はこの厳しい結果を受け、売り上げ規模の拡大よりも利益の確保を重視した新規の事業計画を策定している。 - 車載半導体 ルネサス インタビュー:SoCを分離すると顧客の期待に応えられない、3つの製品分野一体の強みを生かす
厳しい事業環境にある、半導体メーカーのルネサス エレクトロニクス。しかし、中核に位置する車載半導体事業の実力は、世界でもトップクラスだ。同社で車載半導体製品のマーケティング戦略を統括する金子博昭氏に、製品開発の方向性や、強みを生かすための施策について聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.