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自動車唯一の電源、鉛バッテリーの仕組みいまさら聞けない 電装部品入門(1)(2/3 ページ)

自動車のさまざまな機能を支える電装部品。これら電装部品について解説する本連載の第1回では、自動車の唯一の電源である鉛バッテリーの仕組みについて取り上げる。

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鉛バッテリーの基本構造

 ここからは、鉛バッテリーの基本構造について見ていきましょう。

 鉛バッテリーの内部には、陽極板である二酸化鉛(PbO2)と陰極板である海綿状鉛(Pb)、そしてこれらの電極を満たすようにして電解液の希硫酸(H2S04+H2O)が入っています。両極板と電解液が化学反応を起こすことで電力が発生します。

鉛バッテリーの構造
鉛バッテリーの構造(クリックで拡大)

 陽極板の二酸化鉛は茶褐色、陰極板の海綿状鉛は灰色です。両極板が直接触れてしまうと外部に放出する前に電力を失ってしまうので、短絡防止のセパレータ(絶縁物)を間に挟んだ状態で両極板が交互に設置されています。

 二酸化鉛は粒子間の結合力が弱く、経年劣化によって極板から脱落してしまうという欠点があります。そうなると修復は不可能であり、バッテリーの性能低下に直結してしまいます。この脱落を少しでも防止するために、ガラス繊維で作られたガラスマットで陽極板を両面から保護していることが多いのですが、コスト削減のためにガラスマットを採用していない製品もあります。

 陽極と陰極、1対の極板が入った部屋を「セル」といいます。セル内部に配置された極板の枚数や大きさに関係なく、鉛バッテリーは1セル当たり約2Vの電圧を出力します。ただし、セル内部の極板容積(表面積)が大きいほど、化学反応を起こす成分が大量に存在するということになり、バッテリーとしての容量(や寿命)も向上します。

 鉛バッテリーの内部では、6つのセルが直列に接続されています。これにより、鉛バッテリーの放電電圧は12Vになります。現在の自動車に用いられている車載システムの基準動作電圧が12Vになっているのは、鉛バッテリーの放電電圧に合わせるためです。

 ただしトラックなどの大型車は、エンジン始動時に必要な電力が乗用車よりも大きいため、24Vを基準電圧としています(12V鉛バッテリー×2個直列が基本)。

ターミナル

鉛バッテリーのターミナル部
鉛バッテリーのターミナル部(クリックで拡大)

 鉛バッテリーから電力を取り出すために、ターミナルという突起部が本体の上部に設けられています。このターミナルは通常は鉛製です。

 ターミナルと、自動車に電力を供給するために用いるバッテリーケーブルは、ネジの締め付け力によって締結されています。このネジ締めの際に、ケーブル側端子がターミナルの塑性変形によってしっかりと食い込むことで接触面積を増やし、電気抵抗の低減ならびに緩み防止を実現しています。

 例えば、エンジンを始動するためのスタータ電流はかなり大きめの電流になります。バッテリーケーブルとターミナルを単に接触させるだけでは、このスタータ電流を確保できず、エンジンを始動できない恐れがあるのです。バッテリーケーブルとターミナル接触面積が大きくすること、つまり接触抵抗を小さくすることで、大電流を出力できるようにするのがいかに重要かが分かりますね。

 より現実的な観点で見れば、極板に使用している鉛を上に伸ばせばそのままターミナルとして使用できることが挙げられるでしょう。内部の鉛と、鉛以外の金属を接合するのは現実的ではありません。この点だけでもターミナルを鉛製にすることは頷けますが、さらに鉛は電解液である硫酸に溶けないので安全が確保しやすいというメリットもあります。

液口栓

鉛バッテリーの液口栓
鉛バッテリーの液口栓(クリックで拡大)

 液口栓は、自然蒸発によって減少した電解液の水分を補充する際に用いるバッテリー液(蒸留水)の注入口です。バッテリー液の追加は、定期的に6つある各セルの液面を点検して、必要に応じて液口栓を取り外して追加します。

 ただし最近は、この液口栓が「開封禁止」になっている、メンテナンスフリー(補水不要)の鉛バッテリーもあります。各メーカーが、さまざまな工夫を施して電解液の水分の減少を防ぐとともに性能の低下も防いでいるのです。

 極板が一部でもむき出しになると、鉛バッテリーの劣化速度が著しく上昇してしまい、充電しても元の状態に戻らなくなります。鉛バッテリーの日常点検が現実的に行われにくいことを考えると、これらのメンテナンスフリー品は、安心して鉛バッテリーを使用する上で画期的な製品といえるのではないでしょうか。

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