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設計自動化のベストバランス、自動と手動が8:2(前編)山形カシオの徹底的な金型設計自動化(2/3 ページ)

自動化を過信せず、人だからこそ作り出せる付加価値を大事に! 今回は山形カシオの金型設計・製造の自動化の取り組みを徹底紹介する。

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金型設計の自動化処理と用語

 以降は、山形カシオが取り組む自動化の一部について、動画を交えて説明していく。他にも自動化している部分があるが、ひとまず公開しても差し支えない部分だけの紹介となる。そうはいっても、結構な部分を公開してくれた。

 金型についてよくご存じでない方は、以下にある射出成形金型の基本構造図を簡単に確認してから、以降の説明を読み進めていけば少し分かりやすくなるだろう。


射出成形金型構造図

 水色の部分が樹脂が注がれ硬化する部分だ。離型後、(3)の流路は撤去して製品にする。

以降の説明に出てくる主な単語

 「モールドベース」はキャビティとコア、製品部分関連(上図の水色)などを抜いた構造となる。成形機に取り付けるためのベースでもある。

 「エジェクタピン」とは、流し込んだ樹脂が硬化してできた製品を取り出すためのピンである。

 「スライド」は、抜き勾配がない形状、抜きづらい形状に対し施される機構。追加されれば、それなりにコストが掛かる(上図には描かれていない)。

 「駒(こま)」は製品を形作る部分。製品を離型しやすくするために分割され、その各部を駒と呼ぶ(「入れ駒」などさまざまな名称がある。上図には描かれていない)。

スライド構造の機構設計

スライド設計

 設計者があらかじめ考えたスライド形状と配置に基づいて、コンピュータが適切な機構部の構造を自動判断し、自動モデリングまで実行する。


スライド機構の自動設計概要

取材に応じていただいた山形カシオ 部品事業部 管理部 生産システム課 課長 三澤裕之氏

 ここではスライド量、ロッキング高さなどが設定される。スライドコア高さなどに基づき、アンギュラピン(スライドコアをスライドさせるための部品)角度調整も実施する。

 金型の信頼性向上を図るために、たわみ計算や補強も自動実行する。例えば、射出圧が掛かって発生するたわみも自動算出し、自動的に形状補強する。

 このような自動処理は、山形カシオの標準化された技術情報に基づくものだが、ときには設計者が意図しない形状となる場合もあり得る。顧客の要望をかなえたい場面も出てくる。そういった場合には、システムに組み込まれた微調整機能を利用する。ただし、設計者の意図が入ることで、守るべき基準から外れる、あるいは不良が起こり得る場合にはアラートを出したり、自動処理で支援したりする。

モールドベースの自動モデリング

MB設計

 モールドベース(キャビティとコアが格納されるベース)は、スライド構造と比べれば共通化がしやすい要素で、自動化された作業が多くを占める。下記の左右2画面に、成形機、使用する樹脂、基本の型構造などの設定を入力することで山形カシオが定める標準ベースモデルが決まり、以後自動モデリングされる。


モールドベース自動設計の概要

 ここでも射出圧によるたわみ量を自動計算し、3次元モデルに対して自動で補強指示をする。例えば、受圧板やサポートピラー(補強用の支柱)の追加、ベース板厚を増すなどだ。金型開閉で使用するスプリングも必要な荷重に応じた本数と種類を自動選択・配置する。「ガラス繊維入り」「高流動性」といった樹脂特性に合わせた型構造や部品形状の設定・修正も自動実行する。

 デモで示された機構では、実際は1分ほどで自動モデリングが完了する(動画は2倍速になっている)。

 上記の自動処理だけで設計が完了するわけではなく、ほかに詳細な設計を詰める必要があるが、それを含んだとしても1時間以内でモールドベース設計は完了するという。従来は設計完了まで9時間かかっていたということだ。


モールドベース自動設計。従来と現在の作業時間比較

 市販の3次元CADなどに実装されている金型設計ツールでは、双葉電子工業が定めるベースの規格に準拠したパラメータ(寸法)を入力して、基本形状をモデリングするまでが限界だった。細かな構成部品を自動配置するなどはできなかった。また独自で定めた標準に沿ってテンプレート仕様書を幾つか作成しておき、変更が必要な部分については寸法入力して設計していた。

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