新型「オーリス」は欧州の競合車種を徹底ベンチマーク、走行性能を大幅向上:主戦場は欧州市場
トヨタ自動車が日本市場での販売を始めた新型「オーリス」。主戦場となる欧州市場で、フォルクスワーゲンの「Golf」をはじめとするCセグメントハッチバックの競合車種に対抗するため、走行性能を大幅に向上している。
トヨタ自動車が、2012年8月20日に日本市場での販売を開始した新型「オーリス」。フロントフェイスに採用した「キーンルック」をはじめ、従来モデルと比べて大幅な意匠設計の変更が施されている(関連記事1)。
その一方で、操縦性や走行安定性といった走行性能を向上したことも特徴の1つとなっている。これは、既存モデルの累計出荷台数のうち約70%を占める欧州市場で競合する、Volkswagen(フォルクスワーゲン)の「Golf」やFord Motorの「Focus」といったCセグメントハッチバックに対抗するためだ。「試作車を実際に欧州に持ち込み、アウトバーンをはじめとする公道を使って競合車種との乗り比べを徹底的に行った」(トヨタ自動車 製品企画本部 主査の末沢泰謙氏)という。
走行性能の向上は、低重心化や、ボディ剛性の向上、サスペンションと電動パワーステアリング(EPS)の改良が中心となっている。
新型オーリスは、既存モデルと同じ「新MCプラットフォーム」がベースとなっているものの、アッパーボディは全面的に設計を変更している。車両の外形寸法は、全長4275×全幅1760×全高1460mm(4WDは1480mm)で、既存モデルと比べて全長を30mm伸ばして、全高を55mm減らすことで低重心化を図った。空力特性も向上しており、Cd値は従来比で0.01少ない0.28となっている。全高が55mm減ったものの、着座位置を40mm下げるとともに、インテリアの造形に広がりを持たせて、室内空間の開放感を損なわないようにした。
走行時の運動性能の基本となるボディねじり剛性については、バックドアの開口部を補強するなどして従来比で10%向上した。ボディねじり剛性の向上により、振動が抑制された高い乗り心地を実現している。
エンジン排気量が1.8l(リットル)のモデルについては、リヤサスペンションをダブルウィッシュボーン式にして、後輪側の安定性を高めた。さらに、EPSにブラシレスモーターを採用するとともに、ギヤ比をクイックに設定することで、ステアリング操作に対する応答性を向上している。「Golfの現行モデルと比べて、ステアリング操作の応答性では明確な優位性を確認できた」(車両試験の担当者)という。
新型オーリスのパワートレインは、イメージリーダーとして設定した「RSグレード」に採用した6速MT(マニュアルトランスミッション)を除いて、2012年5月に発表した新型「カローラ」と同じものを採用している(関連記事2)。エンジンは、排気量1.5lの「1NZ-FE」もしくは同1.8lの「2ZR-FAE」で、RSグレードの6速MT以外のトランスミッションは「Super CVT-i」となっている。
欧州市場ではハイブリッドとディーゼルも
なお、欧州仕様の新型オーリスは、2012年9月末からフランス・パリで開催される「パリモーターショー」で正式発表される。排気量1.5lと1.8lのガソリンエンジンモデルだけの日本仕様とは異なり、同1.8lのガソリンエンジンとハイブリッドシステムを組み合わせたハイブリッドモデルと、同1.4lと同2.0lのディーゼルエンジンモデル、同1.33lと同1.6lのガソリンエンジンモデルをラインアップしている。
トヨタ自動車は、ハイブリッド、ディーゼル、ガソリンの販売比率はそれぞれ3分の1と想定。既存の欧州市場向けオーリスにもハイブリッドモデルがあるものの、販売比率は3分の1に達していない。同社は、新型オーリスの投入でハイブリッドモデルの販売比率をさらに高めていく構えだ。
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