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未来に追いついた? 映画や漫画に出てきそうなカーナビパイオニア HUDカーナビ インタビュー(後編)(2/2 ページ)

パイオニアがカーナビ向けに開発したHUD(ヘッドアップディスプレイ)が大きな反響を呼んでいる。「『ドラゴンボール』に出てくるスカウターのようだ」「『宇宙兄弟』に出てくる宇宙ナビのようだ」……。漫画やSFに出てきそうなこのカーナビ、開発にはどのような苦労があったのか。同社の開発担当者に話を聞いた。

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「これでいける!」と思った瞬間

土肥:HUDの開発に携われてきて「これでいける!」と思った瞬間はありましたか?

古賀:2010年と2011年に「CEATEC」(最先端IT・エレクトロニクスの総合展示会)で、HUDを展示しました。ただ1年目のときは「ARを使って……」といったコンセプトではありませんでした。ドライバー席の前にあるスピードメーターの上あたりに専用のコンバイナーを設置して、情報を浮かせて表示していました。走行しているところに地図があって……まるでロボットが動いているといった感じでしたね。

 そして翌年のCEATECでは、目の前の風景に情報を重ねるARを取り込みました。HUDもサンバイザー部分に設置して、今の形にかなり近いモノでしたね。フロントガラスの前方1.5〜2m先の空間に19インチ相当の映像を浮かせて表示しました。

 1年目も反響はあったのですが、2年はさらに大きな反響がありました。多くのメディアから注目され、実機体験していただくのに「60分待ち」といった状況でした。たくさんの人から好意的な感想をいただいたので、「自分たちが目指していた方向は間違っていなかった。これでいける!」と思いましたね。

 ただHUDは、今後も“変化”していかなければいけません。「近未来のカーナビがやってきた」という声もありますが、機能面ではまだまだ発展させていく余地があります。

 情報量は本当にこれでいいのか。どの情報を表示して、どの情報を表示しないのか。さらに映し出すときにどのように表現すればいいのか。こうした点についてはもっともっと検証して、最適な形を研究していかなければいけません。

2010年の「CEATEC」の展示風景2011年の「CEATEC」の展示風景 パイオニアは、2010年と2011年に開催された「CEATEC」にHUDを出展している。左の写真は2010年の展示風景、右の写真は2011年の展示風景である。(クリックで拡大)

理想のカーナビとは

土肥:米国で放送された「ナイトライダー」というテレビドラマをご存じでしょうか?(関連記事2) ドラマの中では人工知能を搭載したスーパーカーが登場します。そのクルマは言葉が話せ、元刑事とともに正義の騎士として悪と戦うのですが、カーナビもドライバーとともに楽しく運転できるようなモノになるかもしれない。

古賀:近い未来だと思いますが、フロントガラスに直接ナビ情報を映す技術が発達し、それが普及するでしょうね。そして車種を選ばず、視線移動の少ないカーナビがでればいいなあと思いますね。


取材メモ

 「HUDの開発にあたって苦労されたことは?」と聞いたところ、古賀氏は次々に事例を挙げてくれた。記事では紹介しなかったが、まず「HUDをどこに置けばいいのか」といった議論から始まったそうだ。

 フロントウインドウの上の部分に設置することが決まったものの、次に「どのように設置すればいいのか」という難問にぶちあたった。HUDはサンバイザーの取り付け穴を利用するが、穴の規格はバラバラ。メーカーだけでなく、車種によってもバラバラ。同じ車種でも年式などによってもバラバラなのだ。

 できるだけ多くの車種に……という想いから「取り付けキットを増やそう」という意見もあったが、それだと車種ごとに必要になる。問題点を洗い出し、最終的には挟み込んで取り付けるようにした。

 最後に「古賀さんがこだわったところは?」という質問に、意外な答えが返ってきた。「コンバイナーのアーム部分を見てください。クルマに付いていて違和感のないデザインにしたんですよ」と。アームなので強度を保ちつつ、クルマの内装に溶け込むようなデザインにしたという。もしHUDに触れる機会があれば、開発者のこうした声を思い出すのもいいかもしれない。(Business Media 誠 編集部・土肥義則)


なぜ映像が浮かび上がるの? 近未来のカーナビが登場した(前編)

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