自動車業界のSiCデバイス採用が始まる、まずはEV用急速充電器から:電気自動車
次世代パワー半導体であるSiCデバイスの、自動車業界への採用が始まっている。電気自動車(EV)用急速充電器の電力変換効率を高めるために、既に実機に搭載されているのだ。
次世代パワー半導体として長らく開発が進められてきたSiC(シリコンカーバイド)デバイス。“次世代”と言う以上、量産製品への搭載がほとんど進んでいないように感じられるが、実際にはそうではない。各種電源装置に組み込まれているDC-DCコンバータやインバータの必須部品の1つであるダイオードについては、SiCベースのショットキーバリアダイオード(SiC-SBD)が採用されつつあるのだ。
「TECHNO-FRONTIER 2012」(2012年7月11〜13日、東京ビッグサイト)の技術シンポジウムのSiCデバイスに関するセッションに登壇した、ロームのSiCパワーデバイス製造部で副部長を務める伊野和英氏は、「現在、SiC-SBDは、データセンターなど大規模サーバの電源や、エアコンのインバータ、太陽光発電システムのパワーコンディショナに搭載されている。自動車関連では、電気自動車(EV)用の急速充電器への搭載が始まっており、2013年からは数量的にも需要が本格化するだろう」と述べた。
EV用急速充電器は、最大50kWという高い出力でEVの大容量二次電池に短時間で充電する装置である。その中には、交流電力を直流電力に変換するインバータ、この直流電力を一定の電圧と電流にするためのDC-DCコンバータが組み込まれている。これらの電力変換回路の効率を向上すれば、EV用急速充電器の電力変換効率も高められる。伊野氏によれば、「数年前から、EV用急速充電器にはSiC-SBDが採用されている」という。
TECHNO-FRONTIER 2012に出展したアポロ電気も、SiC-SBDの採用で電力変換効率を向上したEV用急速充電器「KE72060」を出展していた。既存品の電力変換効率は70%程度だったが、SiC-SBDを採用したKE72060は70%後半まで効率を向上している。
なおKE72060は、トヨタ車体の1人乗りEV「コムス」(関連記事)にも採用されたパナソニックのEV用鉛電池向け急速充電器で、出力容量は電圧が72V、最大電流が60Aとなっている。価格は約50万円。
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