超急速充電器が登場、わずか3分で50%充電可能:電気自動車
EVの充電時間を短くする取り組みが進んでいる。JFEエンジニアリングは、超急速充電器を開発、8分間で80%の充電に成功した。充電器内に二次電池を内蔵することで実現した。
鋼構造物の設計製造やエネルギーシステム関連のエンジニアリング企業であるJFEエンジニアリングは、2011年9月28日、電気自動車(EV)を数分で充電できる超急速充電器「Super RAPIDAS」を開発し、実証実験に成功した(図1)。
3分間でEVが搭載する電池容量の50%を充電でき、8分間で80%に達するという。従来の急速充電器を使うと電池容量の80%を充電するには30分を要していた。つまり、Super RAPIDASを使うと約4分の1の時間で充電できることになる。
図1 超急速充電中の様子 Super RAPIDAS充電スタンド(図左)からEVに充電しているところ。国内で広く普及しているCHAdeMO方式の急速充電器としても利用できる。JFEエンジニアニングが市販車から改造したEVを用いた。出典:JFEエンジニアリング
高速に充電できるように、Super RAPIDASとEVの両方に東芝のリチウムイオン二次電池「SCiB」を搭載した*1)。実証実験ではSuper RAPIDASに40kWh、EV側に11kWhの二次電池を内蔵している。EV側の二次電池の容量が0のとき、500V、400A(200kW)で充電し、その後、電圧を400V(160kW)まで下げ、電流を徐々に絞る形で充電した。
*1)東芝によれば、SCiBをCHAdeMO方式の急速充電器(三相交流200V、50kW)で充電した場合、5分間で電池容量の1/4程度、10分間で半分、15分間で80%充電可能だ。これは一般的なリチウムイオン二次電池の約半分の時間である。
今後は横浜市内の本社構内に設置したSuper RAPIDASを使って実用性試験を続け、EV路線バスやEVトラック、EVタクシーなどの事業に向けた超急速充電器の市場投入を進める計画だ。「これらの商用車は運行拠点が決まっており、新しい充電インフラを導入しやすい」(同社)。その後EV乗用車への導入を狙う。
Super RAPIDASは、現在日本国内で標準となっているCHAdeMO規格とは非互換だ。「充電用コネクタは海外規格品を使った。ただし、通信プロトコルなどはCHAdeMOと合わせられるように作った」(同社)。今後は、充電器の標準化団体や自動車メーカーとの協力を進めるという。
なぜ超急速充電なのか
同社が超急速充電器を開発した理由は、充電時間を短くすることでさまざまなメリットが生まれると考えたからからだ。
- EVのオーナーにとっては、外出先でもガソリンスタンドと同等の時間で充電が完了し、利便性が高まる。
- 充電スタンドにとっては、設備投資額が少なくなり、単位時間当たりのEVの回転率が高まる。
設備投資額を低減できる理屈はこうだ。
同社は、30分で80%充電が可能な急速充電器「RAPIDAS」を2010年3月から発売している。国内で広く普及しているCHAdeMO規格認定製品としては、唯一二次電池(リチウムイオン二次電池、30kWh)を内蔵している。
RAPIDASに二次電池を搭載した理由は、設備投資を抑えられるからだ。CHAdeMO規格で定められた最大出力50kWを実現しようとすると、50kWに対応した変電設備を導入しなければならない。さらに電力会社との契約を変更する必要がある。二次電池を内蔵すれば、20kWの設備でCHAdeMO規格に対応できる。同社によればガソリンスタンドに急速充電器を設置する際、RAPIDASを採用すると設備投資額を6割に抑えられるという。
Super RAPIDASでも二次電池を内蔵するメリットは全く同じだ(図2)。一般的な200Vの三相交流(20kW)の契約を結べば、超急速充電が利用できる。夜間電力を用いて内蔵二次電池に充電すれば、さらに電力コストを引き下げられる。電力のピーク需要抑制にも役立つ。
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