マツダが「デミオEV」を10月からリース販売、100V給電システムも搭載:電気自動車
マツダは、小型車「デミオ」をベースに開発した電気自動車(EV)「デミオEV」のリース販売を2012年10月から開始する。容量20kWhのリチウムイオン電池を搭載しており、満充電から200km走行できる(JC08モード)。車載電池から、100Vの電力を供給する給電システムも搭載した。
マツダは2012年7月6日、小型車「デミオ」をベースに開発した電気自動車(EV)「デミオEV」のリース販売を、同年10月から開始すると発表した。容量20kWhのリチウムイオン電池を搭載しており、満充電から200km走行できる(JC08モード)。車両本体価格は357万5000円。リース価格は現在のところ決まっていないものの、中国地方の地方自治体や法人顧客を中心に、約100台を販売する予定である。
デミオEVの外形寸法は、全長3900×全幅1695×全高1490mm。全長と全幅は、ベース車のデミオと同じだが、全高は15mm高い。車両重量は1180kg。エンジンやトランスミッション、燃料タンクに替えて、より重い電動システムや大容量のリチウムイオン電池を搭載しているものの、EV化による重量の増加を180kgに抑えた。車室内の寸法は、室内長1815×室内幅1425×室内高1220mmで、ベース車と同じ容積を確保している。
モーターとインバータは、安川電機が独自に開発した巻き線切り替え技術が特徴の「QMET DRIVE」を採用した。QMET DRIVEは、回転数に応じて巻き線を切り替えることにより、発進時などに必要なトルクと、高速走行時に必要な回転数の両方を高めることができる。これにより、「優れた加速性能、ハンドリング、乗り心地を兼ね備えた“Zoom-Zoom”な走行性能をEVでも実現できた」(マツダ)という。モーターの最高出力は75kW(5200〜1万2000rpm)、最大トルクは150Nm(0〜2800rpm)。
リチウムイオン電池は、パナソニックの18650タイプ(直径18×長さ65mm)の電池セルを採用した(関連記事1)。18650タイプは、ノートPCなどに使用されておる汎用サイズの電池セルで、コスト低減が容易なことが特徴。電池パックの20kWhで、出力電圧は346V、容積は約160リットル。パナソニックが車載向けに展開している18650タイプのリチウムイオン電池セルは、電圧が3.6V、電流容量が3.4Ahなので、電池パック内には17直列×96並列(総計1632本)で電池セルが接続されていると考えられる。電池パックは、ケースにアルミニウムを用いることで軽量化も図った。
通常充電を行うのに必要な車載充電器はニチコン製で、補機類に12Vの電圧を供給するための降圧DC-DCコンバータと一体化している。200V電源を使用した場合の充電時間は約8時間。CHAdeMO規格に準拠した急速充電コネクタも搭載しており、約40分で電池容量の80%まで充電できる。
さらにマツダが独自に開発した100V給電システムをオプションとして用意している。コンセントを2個備えており、AC100Vで最大1500Wまでの電力を供給できる。災害時や野外活動を行う際の電源として最適だという。EVの給電システムを販売するのは、三菱自動車、日産自動車に次いで、マツダが3番目になる(関連記事2)。
ブレーキ時の減速エネルギーを電力として回収する回生ブレーキは、アクセルを離したときに、ベース車のエンジンブレーキと同程度の減速度が得られるように回生を行う。ブレーキを踏み込んだ場合には、踏み込み量に応じて回生ブレーキと通常の摩擦ブレーキを併用する。既存のブレーキシステムを流用しながら、減速エネルギーの効率の良い回生と、ベース車と変わらないブレーキ感を実現している。
走行モードは、通常走行用のDレンジと、より電力消費を抑えられるエコドライブ用のEレンジを設定した。Eレンジでは、アクセルの踏み込みに対する加速を抑え、回生ブレーキを強めている。Dレンジ、Eレンジとも、回生ブレーキをさらに強めるチャージスイッチ(Chスイッチ)を使えば、坂を降りる際などにブレーキをかけやすくなる。
この他、ITサポートシステムを搭載しており、PCやスマートフォンとの連携で、充電や空調システムの遠隔操作や、電池の残容量の確認などを行える。空調システムは、暖房にPTC(正温度計数)サーミスタを用いたヒーターを、冷房に電動コンプレッサを採用するEV専用のものになっている。
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