これがロータリーエンジンの生きる道、水素を燃やしてEVの走行距離を伸ばす:電気自動車
マツダが、水素ロータリーエンジンをレンジエクステンダー(航続距離延長装置)として搭載する電気自動車(EV)を開発中だ。ロータリーエンジン搭載車「RX-8」の生産は終了するが、新たな用途に向けてロータリーエンジンの開発は継続される。
マツダは、水素ロータリーエンジンをレンジエクステンダー(航続距離延長装置)として搭載する電気自動車(EV)を開発していることを明らかにした。2013年に官公庁や企業向けにリース販売する予定である。
同社は、ロータリーエンジンを搭載するスポーツカー「RX-8」の生産を2012年6月で終了する。これによりロータリーエンジン搭載車が同社のラインアップから消えるため、ロータリーエンジンの開発も終息の方向に向かうと見られていた。しかし、EVのレンジエクステンダーとして活用するために、ロータリーエンジンの新規開発を水面下で進めていたようだ。
マツダは1990年代から、二酸化炭素を排出しない次世代の内燃機関として水素ロータリーエンジンを開発を続けている。水素を燃料として使用できる水素ロータリーエンジンは、燃料電池と違って、ガソリンも燃料として使用できることを特徴とする。同社は2003年に、RX-8ベースの水素ロータリーエンジン車「RX-8 ハイドロジェンRE」を、2008年に水素ロータリーエンジンを搭載する「プレマシー」ベースのハイブリッド車「プレマシー ハイドロジェンREハイブリッド」を発表。両車ともリース販売されている。
同社は「デミオ」ベースのEVも開発しており、2012年後半からリース販売を始める計画である。水素ロータリーエンジン搭載EVのベース車両は明らかになっていないものの、水素ロータリーエンジン車とEVの開発で得た技術を活用して開発を進めることになりそうだ。
ロータリーエンジンは、一般的なガソリンエンジンと比べて、小型・軽量であることを特徴とする。高速道路で加速するときなど高回転域での効率は高いものの、市街走行中に使用する低回転域の効率やトルク性能は低い。水素ロータリーエンジンになると、燃料に水素を使用する場合の出力が、ガソリンを使用する場合よりも低くなるという問題もあった。
一方、水素ロータリーエンジンをEVのレンジエクステンダーとして使用するのであれば、発電機用の内燃機関として使用するので、効率やトルクが低い低回転域を使用する必要がない。水素を燃料として使用する場合の出力の低さも、走行の動力として用いない以上大きな問題にはならない。もちろん、小型・軽量という特徴はそのまま生かせる。
なお、アウディが開発中のEV「e-tron」には、レンジエクステンダーとしてロータリーエンジンを搭載する車種がある(関連記事)。
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