Androidケーススタディ 〜図書館での活用イメージを考察する〜:金山二郎のAndroid Watch(6)(1/2 ページ)
週に数回は図書館を利用する“本”大好き筆者が、自らの読書スタイルを踏まえ、図書館におけるAndroid搭載タブレットの導入の有効性を考察する。PCからの利用を前提に、10年以上前に設計・構築された図書館システムのサービスはどのように生まれ変わるのか?
連載第4回「Android搭載タブレット端末で成功する鍵とは何か」では、Android搭載タブレットは汎用タブレットとしてよりも、“専用端末”としての大きな可能性を秘めていると述べました。
今回は、実際にAndroidの導入が有効であると考えられる具体例として、“図書館での活用イメージ”を考察してみたいと思います。
図書館をめぐる状況
突然ですが、MONOist読者の皆さんは図書館をどのくらい利用していますか。おそらく、時々利用される方はまれで、頻繁に利用している方と、全く利用しない方に大別されるかと思います。
文部科学省の調べによると、図書館の利用率は年々増え続けているそうです(図1)。人口増加率との比や世代ごとの利用率など、考慮すべき点は多いのですが、“絶対数が増えている”ということは事実のようです。筆者自身、日ごろ品川区の図書館を利用していますが、絵本を探す子連れの夫婦や勉強する学生、趣味の本を楽しむご老人など、幅広い年齢層の方々で活況を呈しています。
本の貸し借りのみならず、図書館ではさまざまなサービスが提供されています。以下にその代表的なものを示します。
- 書籍/雑誌/CD/DVDの貸し出し、閲覧、予約、転送などのサービス
- インターネット利用のためのPCの時間貸し
- 紙芝居などの催し物
- インターネット経由のオンライン予約、開館スケジュールやイベント告知など
“IT化”という点では、オンライン予約のような図書館から提供されるWebサービス(図2)をはじめ、第三者による独自サービスも登場してきており、Android/iPhone向けアプリケーション(図3)、あるいはWebブラウザのアドオン(図4)と多岐にわたります。
図3 Androidの著名図書館アプリLibraroidの設定画面(※出典:「Librariod 使い方」より)。行政をまたいだ複数図書館の蔵書検索や実用的な細かい設定などが魅力。また、図書館側のシステム変更にまめに追従している
図書館利用のモデルケース:筆者の場合
本題に入る前に、図書館利用のモデルケースとして筆者の例を紹介します。
最近すっかりヘビーユーザーとなった筆者は、週に数回は図書館を利用しています。その背景には、住宅事情と経済事情が大きく関係しています。近年、さまざまな書籍が大量に出版されるようになり、必然的に筆者が求める本の量も増加傾向にあります。もうアッという間に狭い部屋に本が積み上がってしまいます……。また、「本にお金を惜しむな!」という教えには共感するものの、現代における書籍代はばかになりませんので、“現実的な方法”を見いだす必要がありました。
そこで筆者は、欲しい書籍を図書館のWebページでオンライン検索し、図書館が所有していて、かつ、予約待ちの状況がそれほどひどくなければ、図書館で借りることにしました。そして、借りた本を実際に読んでみて、繰り返し読みたい、ずっと手元に置いておきたいと思ったら購入するというスタイルをとっています。
余談ですが、インプットの量が多くなる問題については、速読のアプローチやEvernoteなどを組み合わせて解決しています。また、片付け・整理のハウツー本などをたくさん読むことで、いわゆる積読を改善しています。実は、これが最も有効であったかもしれません(笑)。
読みたい本・読んだ本の管理には「読書メーター」というサービスを使っています。同サービスは、書籍検索や相性の良いメンバーが読んだ本の確認などを行えます。Amazonで読みたい本を見つけた際、それを読書メーター内の検索結果として開くようなユーザースクリプトも併せて活用しています。
実際に読みたい本を図書館で予約する際には、まず、読書メーターの読みたい本の一冊をAmazonで表示し、Libronを利用して最寄りの図書館にその本が蔵書されているかどうかを確認します。そして、予約待ちが長くなければ予約し、しばらく待つようであればAmazonで購入してしまうこともあります。
細かいことを言い出すと、建てつけの悪いところもいろいろとありますが、現状はこのような形で運用しています。十分に要領の悪い筆者にしては結果は上々で、書斎にうず高く積まれた本も、実家や倉庫に眠っていた本も着々と整理される方向になってきました。まだまだ情報に追われている感は拭えませんが、積読が減り、お小遣いの使い道は最適化され、読書量は格段に上がり、大きな改善ができたと思っています。
少々長くなりましたが、そのようなわけで、今や図書館は筆者の生活の動線に組み込まれ、欠かせない存在となっているのです。
図書館における既存ITサービスの問題
さて、図書館が提供しているITサービスに話を戻しましょう。先ほどのモデルケースを踏まえて考えると、筆者が利用する品川区立図書館のサービスでは、次のような“不満点”が挙げられます。
- 読みたい本や読んだ本の情報を管理できない
- 書評などがない
- 関連図書などの情報を得る機能がない
- レイアウトがPC向けで、スマホなどでの閲覧が難しい
- 目標設定などができない
やはり使う側からすると、全ての要求(希望する機能や行動)を単一のサービス上で完結して実行でき、かつPCやスマホ、タブレットといった複数の端末からでも同じようなインタフェースで、同じサービスをいつでもどこからでも利用したいものです。しかし、実際は、これら要求を満たすために、複数の端末からバラバラのサービスをつぎはぎ的に利用しなければなりません。
では、図書館自体が、全ての利用者ニーズを満たすサービスを提供すべきなのかというと、筆者はそうは思いません。使う人の要求はさまざまですから、いろいろな応え方があって然るべきだと考えます。また、競争が生まれることで成長も促進されます。すると、これを実現するために、どのようなスキームが必要かということに発展していきます。
このためには、図書館はWeb APIという形で図書館側とのインタフェース提供し、“アプリに使用されることを前提とした作り”にしておくべきです。もちろん、個人情報流出やサーバ障害を招くようなセキュリティホールについては十分な対策が必要ですが。
実は、カーリルという民間企業のサービスが、全国の図書館をつないだ共通のAPIを構築しています。形としては、このAPIを利用すればよいことになります。ただ、幾つかの課題があり(これは主に図書館のシステムの問題ですが)、応答にかなりの時間がかかります。また、今のところは蔵書検索のみの機能提供であり、人気の書籍、借りた本の履歴などの情報は得られません。APIの能力はサービスの根幹ですから、ここは図書館側に期待したいところです。これも余談になりますが、EvernoteのAPIは完全にそのような方針で設計されており、Evernoteが提供するアプリも第三者のアプリも、利用できるAPIは同じということです。
また、多くの図書館ITサービスが、10年以上も前に構築された後で、大幅な改修などがされていない状態のものが多く、脆弱性の不安や性能不足、スマホなど最近よく使われている端末からの利用に耐えられないといった問題を抱えています。そのため、APIとセットで、APIの一利用例として現代の端末に則したWebサービスの提供が望まれます。
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