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“未来感”の伝わる次世代コンセプトカーで将来技術の価値を知らしめるダイムラー 次世代コンセプトカー開発担当副社長 インタビュー(2/2 ページ)

ダイムラーの「メルセデス・ベンツ」ブランドは、同社の革新性を示す次世代コンセプトカー「Fシリーズ」を1991年から開発し続けている。Fシリーズの開発を担当するバーラット・バラスブラマニアン氏に、Fシリーズの最新モデル「F125!」の革新性や、同社が目指す自動車の未来像について聞いた。

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電池開発では協業を拡大

 「未来的な技術を搭載した自動車でも、その未来感が伝わらなければ意味がありません。私たちは、Fシリーズに将来技術を盛り込んでいることを伝え、その価値を理解していただくために、人間と自動車をつなげるHMIの開発に力を注いでいるのです。特に電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)など、内燃機関車よりも頻繁にエネルギーを補給する必要のある自動車の場合には、HMIを介して電池の残量不足の警告や充電状況の管理などを伝えることで、容量の限られた電池の性能を使いこなすことができます」(バラスブラマニアン氏)。

 先進技術の開発に力を注ぐ一方で、中国など新興国向けの技術開発にも着目している。自動車に求められる性能や耐久性などにも新興国独自の要求があるため、開発の現地化を進めているのだ。事実、ダイムラーは、中国の電池/自動車メーカーBYD(比亜迪)と共同で中国国内に開発拠点を設置して、中国市場向けEVを開発している(関連記事)。

ダイムラーのバーラット・バラスブラマニアン氏

 「先進国の顧客は、EVでも従来のエンジン車と同等の走行性能や耐久性を求めるのですが、中国では異なります。例えば中国では、猛スピードでの走行や自動車での遠出をあまり好まない人々がEVの顧客層だと考えています。もちろん、今後EVなどの電動モビリティが新興国で販売台数を伸ばしていった場合、二次電池の価格も大幅に下がっていくことが予測されます。提携先のBYDは中国の大手リチウムイオン電池メーカーですし、日産自動車との燃料電池の共同開発も計画しています。ダイムラーが展開する「AMG」ブランドは、以前から米国のリチウムイオン電池メーカーであるA123 Systemsとやりとりがあります。加えて、Evonikと合弁で設立したリチウムイオン電池の生産とパッケージングを行うDeutsche ACCUmotive(ドイチェ・アコモーティブ)はダイムラー本社の近くに拠点を構えています。将来的に、リチウムイオン電池のエネルギー密度は、現在の約2倍に相当する350Wh/kgまで向上するでしょう。その一方で、価格も下がると予測しています。都市部はEV、郊外に出るときにはPHEVといった使い分けが一般的になるのではないでしょうか」(バラスブラマニアン氏)。

 F125!に搭載される技術のうち、リチウム硫黄電池と水素吸蔵合金の実現には幾分時間を要する可能性が高い。一方、ジャスチャーコントロールやタッチパネルによるHMIなどの技術は現実的な段階まで開発が進んでいるという。

 数多くの将来技術を搭載しいているF125!は、現時点ではコンセプトカーとしてしか受け止められていないだろう。しかし、125年前に誰もが無理だと考えた「馬なし馬車」を発明し、その利便性を世に知らしめたダイムラーだからこそ、この先も革新的な技術を開発し続けながら、それらを搭載する次世代コンセプトカーを発表して、自動車の250周年も祝ってほしいものだ。

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