設計者必携! 板金設計がマスターできる絵辞書:甚さんの「バンバン板金設計でキャリアアップ」(1)(2/2 ページ)
これまでの「甚さんシリーズ」の解説を少し振り返った後、この連載で使うツール「板金設計の50%がマスターできる絵辞書」を紹介する。
電気・電子産業における部品点数分析
オレサマはよぉ、オメェのことが好きになってきてんだぜぃ。技術者っていうのはよぉ、いつの時代も、誰もが「井の中の蛙」だ。指摘されると憤慨する。1度でいい、聞く耳を持つことだ。
甚さんってば、すーぐポンポン殴ろうとするから、そりゃ、聞きますよって……。ところで「図面の2枚に1枚が板金図面」って言っていましたけど、これは、電気・電子産業の場合だけですよね?
オメェ、まーた、甘い空気をふわふわぷんぷんさせんなっ! 図4を見ろ! オメェ、これも前に見ただろう? EV(電気自動車)も家電品じゃねぇかい! あん?
図1の通り、電気・電子産業における部品点数分析の比率は、
板金:樹脂:切削:その他=54:26:8:12
でした。
一方、図4に示すEVにおける部品点数分析の比率は、
板金:樹脂:切削:その他=56:32:6:6
です。
電気・電子産業だけでなく、造船にも、スカイスリーにも板金部品は必ず存在し、部品点数において大きな占有率を示します。
このデータだけなら、EVは電気・電子部品の仲間入りです。隣国の巨大電気・電子企業と巨大自動車企業の合作(協業)で最高のEVが近々に出現するでしょう。残念ですが、協業が苦手な日本企業では不可能かもしれません。
「板金設計の半分ができる」ツール
そんじゃー、良君! 連載第1回を記念して、板金設計の50%ができる「絵辞書」をプレゼントしようじゃないか!(図5)
すごい! これで50%の板金設計ができちゃうんですね! そういえば、学校では教わらなかった内容です。
どうだ! これが職人の世界だ! うぇーいうぇーい!
感激しました。
詳しいことは、以降の回で説明していくからな。
部下は上司を選べない
ところで、「板金の設計力を付けると言っても、学校では教わらないので、実務で学ぶしかありません」とのことでしたが、「実務」ってOJTや徒弟制度のことですよね?
あったりめぇだ。どんな職業も実務は人から人へとノウハウをつなげていくもんだ。料理人なら料理長やコック長、大工なら棟梁、芸術などは師匠だ。オメェの会社にも当然居るだろう? あん?
甚さん……。
「当然居るだろう?」と聞いているんだ。さっさと答えろ、院卒〜っ! うぇいうぇーい!
……。
うぇ……じゃなくて、どうした!? 急に顔色が悪くなったぞ?
企業というところは、上司は部下を選べますけど、……部下は上司を選べないんですよね。
だからどうした! はっきり言え、院卒!
……僕、今の会社を辞めたいんです。
ちょ、ちょっと待て!
甚さんは、このシリーズの記事の中で「そんな会社、辞めちまえ!」と良君によく言っていましたが(悪い口癖ですが)、まさか良君の方から本当にそう言い出すとは、思ってもみなかったようです……。
以前、『甚さんの「技術者は材料選択から勝負に出ろ!」(11):設計審査の超定番「安全率」をごまかすな!』で、安全率に関するノウハウをお伝えしました。
良君も、その記事で語られたセンセーショナルな話題を職場の人たちと共有しました。しかし、彼の上司である係長と課長が無関心だったと、良君は嘆いています……。
「安全率」と言えば、設計審査で必ず審査される設計品質なのに……。
彼らは、今はやりの言葉である部下を育成しない「出世逃げ」で、自分だけが出世する「成果主義」しか頭にないそうです。近年、このような企業が急激に増加しました。その終局にリストラ、合併、倒産の日本企業が存在しているようです。
さて、新シリーズ1回目から波乱の展開!? 良君と甚さんは一体どうするのでしょうか? 次回に続きます。
Profile
國井 良昌(くにい よしまさ)
技術士(機械部門:機械設計/設計工学)。日本技術士会 機械部会、埼玉県技術士。横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師。首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師。
1978年、横浜国立大学 工学部 機械工学科卒業。日立および、富士ゼロックスの高速レーザプリンタの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年より、國井技術士設計事務所として、設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師としても活躍中。「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)と「ついてきなぁ! 『設計書ワザ』で勝負する技術者となれ!」(日刊工業新聞社)をはじめとする多数の書籍を執筆。
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