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「何これ、超速い!」――キミは知っているか、小さくて賢いロボット「マイクロマウス」をマイクロマウスで始める組み込み開発入門(1)(2/3 ページ)

1980年から30年以上継続されているロボットコンテスト「全日本マイクロマウス大会」をご存じだろうか? 小さくて賢いロボット「マイクロマウス」を題材に、組み込み開発の基本を楽しく身に付けよう!

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 単純に区画数で最短距離が決定するわけではなく、マイクロマウスの特性、例えば、直進性能が良くスピードが出せる/スラロームが得意/斜め走行に強いなどを考慮して、「自分(のマイクロマウス)にとって最適な最短経路」を選ぶ必要があります。

 エキスパートクラス決勝の迷路(画像2の経路表示バージョン)でいうと、緑色のルートが優勝したMin7.1が走ったコースになります。第2位のマイクロマウスは青色、3位は黄色のルートを走行しました。もしも、直線が強いマイクロマウスであれば、ピンク色のルートを選択するかもしれません。


画像2の経路表示バージョン
画像2の経路表示バージョン

 さて、このように「いかに迷路内を効率良く探索走行し、自分に最適な最短経路を見つけ出すことができるか?」という点に、マイクロマウスの知性と個性が表れます。小さなメカに、運動性能と人工知能を組み込んだロボット、それがマイクロマウスなのです。

なぜ、今、マイクロマウスなのか?

えみ

小さいのに速くて、賢い! すごいロボットですねぇ。北上センパイ、何でこの動画を見ていたんですか?


北上

実はボクも始めてみようかと思ってさ〜。


えみ

すごいセンパイ! でも、面白そうですけど、何だか難しそうですよね。


北上

そうなんだよ。だからこそ、やってみようと思ったんだよね。自分のスキルアップにもなるし、この経験が絶対役に立つと思うからさ。


 なぜ、北上くんはマイクロマウス大会に興味を持ち、自分もやってみようと思ったのでしょうか。長年、同じテーマで大会を開催しているのであれば、今から参加しても技術的チャレンジの面白みは少ないのではないでしょうか。

 以下に、マイクロマウス大会の参加者数推移を示します。ご覧の通り、年々参加者数が右肩上がりに増えています。なお、昨年度の減少は、震災や円高が影響したものと思われます。

全日本マイクロマウス大会の参加者数推移グラフ
表1 全日本マイクロマウス大会の参加者数推移グラフ 
※1980〜2008年データに関しては、ロボコンマガジン 2009年11月号「マイクロマウス30年史」より引用。なお、2009年以降は筆者取材により得たデータである

 特に注目したいのが、フレッシュマンクラスの参加者の増加です。主に大学生が中心ですが、高校生や中学生の参加者もいます。ちなみに、フレッシュマンクラスに出場してゴールに到達できた場合は、次回からエキスパートクラスへ進まなければなりません。つまり、毎回参加者の何割かがフレッシュマンクラスを卒業しているにもかかわらず、参加者数は増えているのです。これはスタートから30年を経た今でも、年々、マイクロマウス大会の裾野が広がっていることを意味します。

 このように、今なお人気を集めるマイクロマウスの魅力はどこにあるのでしょうか。

 一般的なロボットコンテストの場合、アイデアやメカニズムの面白さに注目が集まります。アームでモノをつかみ、持ち上げたり、二足歩行ロボットがバトル(対戦)したり、踊ったりというものです。また、毎年テーマが変わるロボコンなどでは、機構のアイデアを出して、作り・動かすというモノ作りの面白さを体験できるものもあります。

 それらと比べると、マイクロマウスは派手さがなく、“地味なロボット”といえるかもしれません。

 マイクロマウスの場合、メカニズムよりも、ソフトウェアの比重が大きいのが特長です。きちんと動くメカを作り、後はロボットの知性を向上するためのソフトウェアをひたすら作り込んでいくのです。

 また、手のひらに乗るこのロボットは、個人がシステム設計をして、メカからソフトウェアまでを、きちんと作り込めるギリギリのサイズだといえます。自分で全体設計をし、バランス感覚を磨いておくことは、実際の開発現場でも必ず役に立つはずです。

 もちろん、一番の魅力は「面白い!」ということに尽きます。マイクロマウスを「自分で作れる『F1マシン』だ」と称した人もいるくらいです。

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