デンソーが富士通セミコンの岩手工場を買収、半導体前工程工場は3拠点目に【追加情報あり】:ビジネスニュース 事業買収
デンソーが富士通セミコンダクターの岩手工場を買収する。車載半導体の需要拡大に対応するため新たな製造拠点を求めていたデンソーと、ファブライト戦略を推進している富士通セミコンダクター、両社の思惑が合致した。
デンソーと富士通セミコンダクターは2012年4月27日、富士通セミコンダクターの岩手工場(岩手県金ケ崎町)の譲渡に関する基本契約を締結したと発表した。買収金額は非公開。岩手工場は、2012年10月1日付けにデンソーが設立する100%子会社として新たに事業を開始する予定。
岩手工場は、8インチ(200mm)ウェハーを使った半導体前工程製造ラインを保有している。0.18〜0.35μmの製造プロセスに対応しており、従来はシステムLSIやマイコンを生産していた。敷地面積は約29万m2、建屋面積は約11万6000m2。約530人の従業員は全員が新会社に転籍する。岩手工場で生産していた製品については、「新会社で製造し、従来と同等の品質、納期、サービスで顧客に供給する」(富士通セミコンダクター)という。
一方、デンソーは、本社工場(愛知県刈谷市)、幸田製作所(愛知県幸田町)に次ぐ、3拠点目の半導体前工程工場を取得することになる。岩手工場では、本社工場と幸田製作所と同様に、自社製品向けの車載半導体を生産する計画である。
富士通セミコンダクターは、先端品の生産をファウンドリに委託するファブライト戦略を2009年に発表している。岩手工場の売却もこのファブライト戦略に沿ったものだ。一方デンソーは、同社が手掛ける各種車載機器向け車載半導体の需要拡大と仕様の多様化に対応するため、新たな製造拠点を確保する必要があった。
【追加情報】(2012年2月27日21時00分)
富士通セミコンダクターの岩手工場の生産品目は、デンソーへの譲渡後も、当面は岩手工場で生産されることが明らかになった。なお、岩手工場の主な生産品目は、車載向けのマイコンとシステムLSIである。
デンソーは2016年度までに、岩手工場の製造ラインを、自社製品向け車載半導体の製造ラインへ段階的に転換する計画である。それまでの間は、転換を終えていない製造ラインを使って、岩手工場の生産品目である車載向けマイコンとシステムLSIの生産を継続する。デンソーが、岩手工場の全生産能力を使って自社製品向け車載半導体を生産できるようになるのは、2016年度以降になる。
2016年度以降の時点で、デンソーが保有する半導体前工程工場の生産能力(ウェハー処理能力)は、現在の約1.5倍になるという。
関連記事
- デンソーが運転席だけ空調できるカーエアコンを開発、新型レクサスGSに搭載
家庭用のエアコンでは、空調する場所を選べるエリア制御の機能が広く採用されている。カーエアコンにも、エリア制御が可能な製品がついに登場した。 - デンソーがインテルと共同開発、次世代車載情報通信システム
車載情報通信システムに求められる内容が変わってきた。もはやカーナビを軸としたシステムでは対応できない可能性がある。デンソーはインテルと共同で、次世代車載情報通信システムの開発に乗り出した。 - 富士通セミコンダクター取締役 執行役員副社長 八木春良氏:ファブライトでも生きる“ASIC 屋”の技術力
「ファブレス」という世界的な潮流の中、日本国内の半導体企業も先端プロセスによる製造を外部に委託する動きを進めている。これまで日本企業の強みだった製造技術を手放した後、世界の半導体企業を相手にどのように勝負していくのか……。かじ取りは、難しい。国内半導体企業の一角、富士通セミコンダクターは、既存の自社工場を活用しつつ、最先端の製造プロセスは外部に委託するという「ファブライト戦略」を打ち出している。同社の取締役で執行役員副社長を務める八木春良氏に戦略を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.