SマネジャーとO本部長、悩みは解決するのか!?:S&OPプロセス導入 現場の本音とヒント(5)(3/3 ページ)
部門間のコミュニケーション不全、無意味な会議体に悩まされてきた2人。皆さんにも思い当たるところがあるのでは? 本格的な業務プロセス変革の前に、今回はストーリーを整理しておこう。
S&OPプロセスの標準モデルには複数の種類が存在する
S&OPは1988年にMRPII(ERP)を中心としたコンサルティング会社であるオリバー・ワイト社のコンサルタントによって提唱された需給マネジメントのコンセプトです。その後、EU(欧州連合)におけるリージョナライゼーション、グローバリゼーション、そして製品ライフサイクルの短縮などに対応し進化してきたコンセプトなのです。
従って、図4に示すように、S&OPプロセスについては、その論者や発展段階によって、幾つかの構造やサブプロセスが紹介されています。今回のS&OP連載についても、主要なS&OP論者達のS&OPプロセスを参照し筆者が取りまとめた次のS&OPプロセスの「5ステップモデル」の構造とサブプロセスにのっとっています。
S&OPプロセスの5ステップモデルの構造は、
- 0.データ収集
- 1.新規アクティビティ・マネジメント
- 2.需要マネジメント
- 3.供給マネジメント
- 4.統合された調整活動
そして、
- 5.エグゼクティブ・ビジネス・レビュー
へと至ります。
トップマネジメント以下、関連機能部署のミドルマネジメントが参画する「データ収集+5つのサブプロセス/ステップ」から構成される一連の月次の情報共有と意思決定のプロセスです*。
* 連載『セールス・アンド・オペレーションズ・プランニングの方法論』第1回で言及した「S&OPの標準形とは」も参照ください。
S&OPのベストプラクティスとしての「OKメディカル社」
本ストーリーで、OKメディカル社はグローバルなS&OPのベストプラクティス企業として紹介されています。
日本ではあまり紹介されることのなかったS&OPですが、欧米の製造業では、1990年代の初めに、新たなIT環境の基でのERPパッケージへの移行にあわせてS&OPプロセスの導入が盛んに行われました。ストーリーに登場する外資系医療関連企業でも、1990年代から第一次のS&OPの導入をスタートし、現在では第2次の段階に入っています。
S&OPのベストプラクティスであるかの診断には、S&OPを提唱しているオリバー・ワイト社の『クラスAチェックリスト』*などを用いる方法があります。同チェックリストの章立てを表1に示してあります。この中の第4章「統合ビジネスマネジメント」がS&OPに該当する領域です。
* Oliver Wight International "The Oliver Wight Class A Checklist for Business Excellence Sixth Edition" John Wiley & Sons Inc.2005
章 | 内容 | 主要チェック項目数 |
---|---|---|
1 | 戦略計画プロセスのマネジメント | 11 |
2 | 人材のマネジメントとリーダーシップ | 10 |
3 | ビジネス改善の推進 | 12 |
4 | 統合ビジネスマネジメント(Integrated Business Management) | 10 |
5 | 製品とサービスのマネジメント | 10 |
6 | 需要マネジメント | 11 |
7 | サプライチェーンマネジメント | 11 |
8 | 内部供給マネジメント | 10 |
9 | 外部調達マネジメント | 10 |
主要チェック項目数合計 | 95 |
表1 クラスAチェックリスト(第6版)の章構成(出典:Oliver Wight International "The Oliver Wight Class A Checklist for Business Excellence Sixth Edition" John Wiley & Sons Inc.2005)
『クラスAチェックリスト』はS&OPプロセスの関連領域だけでなく、9つの章(領域)から構成されています。このことからも分かるように、持続可能なビジネス上の成果は、S&OPプロセスのみで達成できるものではありません。OKメディカル社の取り組みにも見られるように、S&OPプロセス以外にもBSC(バランス・スコアカード)を筆頭に複数の手法を複合的に利用する必要があるのです。
専門知識を紹介する第2部
次回からお届けする後半の連載第2部では、次に挙げるS&OPのトピックスについて、あるS&OPの調査・研究機関が作成した「リサーチ・ペーパー」を読みながら、Sさん、Oさん、そしてPさんたちと一緒に、より突っ込んだ学習をしていくことにしましょう。
引き続きご愛読ください。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.