国内自動車メーカーがFlexRayを採用へ、NXPがJasPar規格準拠ICを投入:もう次世代とは言わせない
長らく“次世代”車載LAN規格として知られてきたFlexRayが、ついに国内自動車メーカーの量産車に採用される。
NXPセミコンダクターズは2012年4月11日、東京都内で記者会見を開き、次世代車載LAN規格として知られるFlexRayに対応する同社のトランシーバICが、国内自動車メーカーが開発中の量産車に採用されたことを明らかにした。
同社でグローバル オートモーティブ セールス&マーケティング担当バイスプレジデントを務めるDrue Freeman氏は、「具体的な企業名や車両の市場投入時期などについては答えられない。しかし、ある国内自動車メーカーが、当社のFlexRay対応トランシーバICを使って量産車を開発していることは確かだ」と語る。
FlexRayは、自動車の走る、曲がる、止まるといった走行に関わる制御系システム向けに策定された車載LAN規格である。現在も制御系システムで広く利用されているCAN(Controller Area Network)の10倍となる10Mbpsという最大通信速度をはじめ、さまざま特徴がある。欧州の自動車メーカーが中心のFlexRayコンソーシアムが策定したことや、FlexRay対応ICが高価なこともあって、BMWやアウディなどがFlexRayを採用した車両を数モデル量産している程度にとどまっていた。
一方、国内自動車メーカーも、車載ソフトウェアの標準化団体JasParが中心になって、より実装しやすいFlexRayの仕様である「JasPar規格」をまとめ、FlexRayコンソーシアムに提案するなどしていた(関連記事)。今回、NXPセミコンダクターズが発表したFlexRay対応トランシーバIC「TJA1081B」は、このJasPar規格に準拠することを最大の特徴としている。TJA1081Bは、2012年4月から量産を開始する予定だ。
48Vの電源電圧にも対応
また、TJA1081Bは、アウディ、BMW、ダイムラー、フォルクスワーゲン、ポルシェが求めていた、48Vの電源電圧に対応したことも特徴となっている。Freeman氏は、「2011年6月にドイツのルードヴィッヒスブルクで開催された会議で、これらのドイツ自動車メーカーは、数年内に一部の車載システムの電源電圧を12Vから48Vに移行すると共同で表明した。今回発表したFlexRay対応トランシーバICは、この要求に応えて、48Vの電源電圧に対応可能なように60Vの最大耐圧を実現している」と述べる。
一部の車載システムとは、電動パワーステアリングや、車両統合制御システム、カーエアコンといった比較的容量の大きなモーターを搭載するシステムが対象となる見込み。電源電圧を高めることにより、電力供給用ケーブルやモーターを小型化できるというメリットが得られる。
なお、メーターやパワーウィンドウ、ミラー、車載情報機器などについては、従来通り12Vの電源電圧を使用することになりそうだ。
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- 始動するFlexRay
次世代の車載LAN規格として注目を集めてきたFlexRay。その本格採用が、間もなく始まろうとしている。同規格は欧州を中心として策定されてきたが、その最終仕様が2009年末までに発表される見込みだ。この最終仕様には、日本の自動車メーカーの意見も取り入れられており、2010年以降は、日米欧で FlexRayを採用した新車開発が本格化する。 - 畔柳 滋氏 JasPar 運営委員長/トヨタ自動車 制御ソフトウェア開発部長:FlexRayとAUTOSARは実装段階へ、機能安全と情報系にも取り組む
国内自動車メーカーを中心に車載ソフトウエアの標準化を推進している団体JasPar。2004年9月の設立からさまざまな取り組みを進めてきたが、2010年度からは、活動の幅をさらに広げていく方針を明らかにしている。2009年7月からJasParの運営委員長を務めているトヨタ自動車 制御ソフトウェア開発部長の畔柳滋氏に、これまでのJasParの活動成果や今後の方針について語ってもらった。