ソニーの「コンセント」はひと味違う、プラグを認証して多彩な動作が可能:スマートグリッド(2/2 ページ)
電力を供給する単なる通路だったコンセント。ソニーはコンセントに通信機能を持たせることで、インテリジェントなコンセントを開発した。危険防止や課金、スマートグリッド(HEMS)支援などさまざまな使い方が広がる。
どのような技術を開発したのか
今回の発表は、認証コンセント実現に必要な技術を開発したというもの。実際にコンセントや機器を開発したのではない。非接触ICカード技術に必要なチップセットやリーダー、ライターも既に量産されている。
では何を開発したのだろうか。2点ある。
1つは、コンセント内に埋め込んでも動作するように設計を最適化したことだ。特に無線を受信するアンテナ部を工夫したという。もう1つは、電力線重畳通信技術を新規開発したこと(図5、図6)。
電力線を経由して通信を行う手法は既に存在し、商品化も進んでいる。PLC(Power Line Communication)だ。屋内でインターネット接続を実現する際、無線LANでは感度が落ちる場合に有用だ。コンセントにPLCモデムを対にして差し込むだけで利用できる。
ただし、PLCはコンセントに通電しないと使えない。ソニーの電力線重畳通信技術は、非通電時にも利用できる点が優れている。安全性を確保するような使い方では、電力線重畳通信技術でないと対応が難しいだろう。
電力線重畳技術は、非接触ICカード技術と組み合わせて使う。非接触ICカード技術ではリーダー/ライターの通信に無線を使う。電力線重畳通信技術ではその部分を電力線経由で実行する。
図2にある非接触ICカード技術だけでは不十分なのだろうか。日常の利用では非接触ICカード技術で十分だ。ただし、延長コードなどを使ってコンセントを数m〜数十m引き延ばしたり、無線の利用が難しい環境でも認証できるという点が優れている。
今回の技術は、スマートグリッドで家庭内の中核を占めるHEMS(Home Energy Management System)と組み合わせても力を発揮する。HEMSは屋根に設置した太陽光発電システムや、屋内外に置く大容量蓄電池の管理は得意だが、個々のコンセントの管理には必ずしも適さないからだ。認証型コンセントの情報をHEMSが統合し、これまでよりもきめ細かなエネルギー管理ができるようになるだろう。
ソニーは認証型コンセントに必要な機器とシステムを今後、実用化していく。当初は省エネのメリットを訴えるが、その後、省エネ以外の価値を生み出すために、各種サービスのトライアルや検証を続ける。製品やサービスにかかわる技術・サービス仕様を他社を巻き込む形で策定するとした。
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