Android搭載タブレット端末で成功する鍵とは何か:金山二郎のAndroid Watch(4)(2/3 ページ)
金山二郎のAndroid Watchの第4回。発売当初、さまざまな課題により普及に結び付かなかったAndroid搭載タブレット端末だが、最近、急速に進化を遂げている。「IceCreamSandwich」の登場、高性能なCPUが安価に手に入るようになったことを背景に、スマートフォンやタブレット端末にとどまらず、多種多様な組み込み機器にまでその活躍の場が広がりそうだ。今回はこうした流れを踏まえ、Android搭載タブレット端末の今後あるべき姿に迫る。
「Kindle Fire」の成功とAndroidの成熟
さて、景気の悪い話はこのくらいにして、今やAndroidかいわいきっての“注目株”であるAmazonの「Kindle Fire」に話題を変えましょう(図2)。
Kindle Fireは予約時から注文が殺到し、2012年にはAndroid搭載タブレット端末のシェア50%に達するという予想すらあります。実際に50%を占めるかどうかは分かりませんが、それにしてもAndroid搭載タブレット端末の代表格であるSamsungの「Galaxy Tab」をはるかに凌ぐ勢いということになります。
さて、この大きな成功をつかむことが確実視されている端末(Kindle Fire)をどう捉えるべきなのでしょうか。デバイスの位置付けとしては“電子書籍端末”となります。電子書籍は特別な市場ですから、電子書籍端末をタブレット端末と区別する向きもあります。しかし、そのような分け方をしていると、Android搭載タブレット端末の次なる成功を導くことはできません。
図2 爆発的な売れ行きが予想されるAmazonの「Kindle Fire」。その確かな成功は、パイオニアとしてのネット販売業自体の実力と、Android以前からのKindleの地道な開発により導かれた
Kindle Fireのような“特定用途の端末”のソフトウェアプラットフォームになり得るのがAndroidの大きな特長の1つです。Appleはよほどのことがなければ「iOS」をライセンス提供しないでしょうから、実質、iOS搭載製品イコールApple製品ということになります。そして、Appleがどこか特定のネット通販サイトのために端末を作ることなどはあり得ないといってよいでしょう。アプリを作ってApp Storeに登録させる以外の道は開かれていません。
そのような意味で、特にiPadを汎用タブレット端末と呼んでもよいでしょう。もちろん、対抗となるAndroid搭載タブレット端末にも汎用のものはあります。SamsungもLGもソニーも富士通も東芝も発売しています。しかし、それらがたった1機種の特定用途端末に追い越されてしまいそうな状況を見たときに、Android搭載タブレット端末を有効活用する道についてあらためて考えさせられました。
そもそも、Androidはさまざまな組み込み機器への適用も期待されたオープンソースのソフトウェアプラットフォームでした。しかし、実際にはそのような機器への本格的な普及には至らず、もっぱらスマートフォン、それにタブレット端末とGoogle TVなどのTVのために使われてきました。スマートフォンでの展開は軌道に乗ったものの、タブレット端末やTVについては、正直なところ、少しばかり“完成度”という点で胸を張れないところがありました……。
それが、2011年末から起こった幾つかの出来事によって、完成度を上げるという大仕事から“次のフェーズ”に移っていけると感じられるようになりました。
その1つは、やはり「IceCreamSandwich(以下、ICS)」の登場です(参考記事)。ICSの発表でオープンソースとしてのAndroidの道が再び開かれました。気を悪くされたら申し訳ありませんが、日本人はかなりお人好しなので、オープンをうたったり、サービスを無料で提供したりするGoogleのような企業に好感を持つのですが、実際、そのビジネスモデルたるや膨大な数の解説書が出るほど特別で、破壊者と呼ばれ、「Gmail」や「Google Maps」もいつ有料化されるか分かったものではないといわれています。そんなGoogleがAndroidの開発をリードしているだけに筆者は甚だ不安ではありましたが、ICSのソース公開を見てひとまず胸をなで下ろしました。また、「Android 2.x」と「Android 3.x」の2つのブランチで進んでいた開発も1本化されて煩雑さもなくなりました。
もう1つ大きな点は、ハードウェアの性能が格段に向上し、安くなっているということです。Androidが登場したころは、価格を抑えなければならないコンシューマ製品はARM9で「Android 1.5」を動作させたりしていました。チップの性能と当時のAndroidの性能が相まって、起動に延々2分も待たされる……何てことも珍しくありませんでしたし、もちろん起動後の動作も全体的にぎこちないものでした。ところが、今や決済端末程度の機器にすらARM Cortex-A8が採用されています。タブレット端末ともなればARM Cortex-A9のデュアルコアが当たり前で、しかも売価は1万円台です。クアッドコアの値が下がるのはもう少し待たなければなりませんが、ようやく、Androidを快適に動作させられる現実的な価格のチップセットが手に入るようになってきました。これは見逃せない事実です。
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