内陸型メガソーラーは何が難しいのか、山梨県の実例から分かること:スマートグリッド(1/2 ページ)
メガソーラーは広い土地を必要とする。それでは内陸部や丘陵地帯にはメガソーラーは設置できないのだろうか。そうではない。東京電力が山梨県に建設した「米倉山太陽光発電所」から分かること、それは設計手法の工夫でメガソーラーの適地を増やせるということだ。
大規模な太陽光発電所(メガソーラー)を建設するには10ha(300m四方)程度の土地が必要だ。そこで、これまでの国内のメガソーラーの多くは埋め立て地や工業団地の遊休地などを利用して建設されている。
東京電力が2012年1月27日に営業運転を開始した「米倉山太陽光発電所」(甲府市、図1)は、内陸部、それも小山の上に建設されている。平たんで造成済みの埋め立て地とは異なる工夫が必要だろう。
米倉山太陽光発電所は、山梨県と東京電力の共同事業であり、山梨県が20haの土地を無償提供して、東京電力が運転を担う。今後17年間の発電事業を計画しており、最大出力は10MW(1万kW)、内陸部としては最大級のメガソーラーである*1)。山梨県という立地を選択した理由は、全国有数の日射量が得られるためだ。
*1) 東京電力はこれまで川崎市に2カ所のメガソーラーを建設、営業運転を開始している(関連記事1、関連記事2)。
当初は2011年度中に5MW分の営業運転を開始し、残りの5MWは2013年度末までに運転開始を予定していた。しかし、東日本大震災以降の2011年5月に計画を前倒し、今回の営業運転に至った。
メガソーラー建設を明電舎が受注し、2010年10月に着工。ソーラーフロンティアが製造した寸法1.3m×1mの太陽電池モジュール約8万枚を敷き詰めた。
推定年間発電量は約1200万kWh(図2)。これは一般家庭3400軒分の年間使用電力量に相当する。二酸化炭素(CO2)排出削減量は約5100トンである。
内陸型メガソーラーの工夫とは
内陸型メガソーラーは何が難しいのだろうか。
米倉山は標高こそ低いが、れっきとした山だ。当然、大面積の平面を造成することはできない。そこで、広さや形、標高が異なる11の区画に分けて建設することになった。ここで11の区画全てについて独自設計するとコストアップ要因となる。そこで「規模や形状から標準化した設計を数通り作りあげ、それぞれの区画では標準設計を組み合わせて、設計の合理化と土地の有効用の両立を図った」(東京電力)。
太陽電池は日陰を嫌う。米倉山太陽光発電所に採用した太陽電池モジュールはCIS薄膜太陽電池であり、影には強い。しかし、発電効率を保つためには植物の影響をなるべく小さくする必要がある。
そこで、太陽電池モジュールを設置する土地に草が生えにくくする防草特性と、太陽電池モジュール表面に付着するチリやホコリを抑える防塵(ぼうじん)特性を高めた。「具体的にはスギやヒノキの未使用間伐材から作った材料を土壌に混ぜる『有機質土壌改良工法』を取り入れた」(東京電力)。
太陽電池モジュールの設置角度も工夫した。太陽電池を設置するときに最適な角度は、設置場所の緯度に等しい。山梨県であれば約35度である。しかし、米倉山太陽光発電所では設置角度を10度とした。なぜか。
山頂は風が強い。設置角が大きいと太陽電池モジュールなどにかかる風圧が強まり、太陽電池モジュールや基礎、架台(図3)を強化しなければならない。基礎工事費用がかさみ、強度が高い重い架台を採用しなければならなくなる。「工事コストと発電量の両立を図ったところ、10度という角度になった」(東京電力)。
次にメガソーラー1区画を構成する太陽電池モジュールの位置ごとに最適設計を試みた。「メガソーラーの1区画を取り出すと、必ず周辺部と中央部がある。周辺部は強い風を受けるが、中央部はそうではない。そこで風況解析を実行し、中央部の基礎設計や架台工事を合理化した」(東京電力)。
山梨県はリニアモーターカーの実験線が立地している。そこで、太陽光発電などの再生可能エネルギーと超電導技術を組み合わせることが可能ではないか、という発想に至った。次に山梨県の取り組みを紹介しよう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.