東京電力もメガソーラー、国内最大級の運転を開始:スマートグリッド
東京電力は国内でも最大級となる浮島太陽光発電所の営業運転を開始した。最大出力は7MW。2011年末に運転を開始する扇島太陽光発電所と合わせて20MWのメガソーラーが川崎市に完成することになる。
東京電力は、東京湾沿岸に建設したメガソーラー「浮島太陽光発電所」(川崎市川崎区)の営業運転を2011年8月10日に開始した(図1)。川崎市と東京電力の共同事業であり、川崎市が土地を提供して、東京電力が建設、運転を担う形だ。今後18年間の運転を予定している。最大出力は7MW(7000kW)、国内でも最大級のメガソーラーである。
川崎市が所有する約11haの敷地に設置した。メガソーラー建設を東芝が受注し、2010年4月に着工。シャープが製造した寸法1.3m×1mの単結晶Si(シリコン)太陽電池モジュール3万7926枚を敷き詰めた。推定年間発電量は約740万kWh。二酸化炭素(CO2)排出削減量は約3100トンである。
図1 太陽電池モジュールの設置手法 太陽電池モジュールを真南に向けて設置した場合、国内では30度に傾けたとき、最も年間発電量が大きくなる。浮島太陽光発電所では隣接する太陽電池モジュールが作る影を少なくするため、設置角度を10度と小さくした。産業技術総合研究所によれば、真南に設置したとき、20度に設置しても年間発電量は2%しか低下しないという。図中右上は、太陽電池セルの拡大図。出典:東京電力
2011年12月には浮島太陽光発電所から約7km離れた「扇島太陽光発電所」(川崎区)の運転も開始する予定である(図2)。京セラが製造した太陽電池モジュール6万3792枚を日立製作所が約20haの敷地に配置する。最大出力は浮島太陽光発電所の約2倍の13MW。
2カ所の太陽光発電所を合わせると出力は20MWに達し、川崎市川崎区の全世帯が消費する年間消費電力の約6%を供給できる計算になる。
図2 川崎区に位置する2カ所の太陽光発電所 浮島太陽光発電所は多摩川をはさんで、羽田空港の南側に位置する。浮島は京浜工業地帯に位置する埋め立て地で、全域が石油化学コンビナートを中心とする工業用地である。東京湾アクアライン川崎浮島JCTに隣接する浮島1期廃棄物埋立処分地を利用した。扇島太陽光発電所は島の北東部に東京電力が所有する土地に建設中である。出典:東京電力
課題も明らかに
東京電力は浮島太陽光発電所の発電状況をWebページで公開している。営業運転開始の翌日、2011年8月11日の運転状況を見ると、メガソーラーの課題が浮かび上がった(図3)。
メガソーラーは発電量が大きいため、発電量の変動は系統にも影響を与える可能性がある。どうすればよいのだろうか。
産業技術総合研究所によれば、雲の通過などによる数秒から数10分の変動は、距離が離れた発電所を複数設置することで、互いに打ち消し合うことができるという(図4)。
図4 太陽光発電所の分散配置によるならし効果の例 ある1日を取り、20カ所に太陽光発電所を設置したときの出力変動の様子を示した。個々の発電所の出力は激しく変動しているが、平均を取ると赤線のように比較的なだらかな出力に落ち着く。出典:産業技術総合研究所
例えば、浮島太陽光発電所から南西方向に約17km離れた横浜地方気象台では、浮島太陽光発電所で日照量が落ちた2011年8月11日14時には、雲が全く生じておらず、逆に浮島太陽光発電所では雲が見られなかった15時に日照量が低下している。
メガソーラーが数少ない現在では短い周期の出力の変動が問題になる可能性がある。しかし、今後、電力会社当たりの太陽光発電所の建設数が増えていけば、解決に向かっていくだろう。
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