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最強のスポーツカーを作るには、テスラの技術責任者に聞くインタビュー 電気自動車(3/3 ページ)

電気自動車(EV)にはさまざまな課題が残っている。ガソリン車で実現できていた性能、仕様をEVで達成できないことも多い。EV技術を採用したスポーツカー「Tesla Roadster」を作り上げたTesla MotorsでDirector, Battery Technologyを務めるカート・ケルティ(Kurt Kelty)氏にEVの電池技術について聞いた。

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温度管理に向く18650型

MONOist 小型の18650型を大量に集めてパッケージングして使うとなると、セルの管理が難しいのではないか。電池システム全体の信頼性をどうやって高めるのか(図4図5)。


図4 バッテリーモジュールとモーター 18650型セルを組み込んだバッテリーモジュール(図奥)とモーター(手前)を示した。バッテリーパックの重量は450kg。容量は56kWh。モーターの最大出力は215kW、最大トルクは370Nm(Tesla Roadster Sportは400Nm)。出典:Tesla Motors

図5 車体後部とバッテリーモジュールの配置 バッテリーとモーターをリアにまとめた。

Kelty氏 ここで、製造時のバラツキが18650型では少ないことが効いてくる。製造側の経験が長く、決められた仕様にそろえることができる。テスラが採用したセルは、電池自体の信頼性でも他の電池と比較しても劣るところがないと考えている。

 セルの管理がうまくいっているかどうかは、設計・実装したヒーティングとクーリングがうまくいっていることで示せる。Tesla Roadsterでは18650型を6831セル*4)使っている。全てのセルの温度環境は非常に狭い範囲に維持できている。電池を使うにはこれが重要だ。

*4) 6831セルを621セル×11モジュールという構成でパッケージングしている。

MONOist どの程度の範囲に保っているのか。

Kelty氏 全てのセルの温度範囲は±2℃に維持できている。

 もう1つ大事なのは、電池全体を適温に保つことだ。電池は化学反応を利用しているため、高温でも低温でも性能が劣化し、信頼性は落ちる。充電時の温度環境が悪くても悪影響が出る。具体的な温度は話せないが、例えば20〜30℃の範囲に維持しなければならない。これもTesla Roadsterでは実現できている。

MONOist どうやって維持しているのか。

 18650型のパック技術を開発した。18650型は表面積が大きいので、そもそも大型セルよりも温度を維持しやすい。温度を維持するクーリングシステムには空気ではなく、液体を用いた。液体は空気よりも熱容量が大きいので、効率良く冷やせる。

 温度状態はセンサーで確認している。最初に開発した車では電池モジュール内に66個のセンサーを取り付けていたが、現在ではセンサーの個数を減らしても、±2℃に維持できるようになっている。例えば、センサーがセルの加熱を検知したら液体クーリングを動かすという仕組みだ。

 EVではクーリングシステムが、非常に重要だと考えている。1つはセルの寿命が温度環境によって決まること、もう1つは電池の安全性を左右することだ。セル温度が高くなるということは、セルが危険な状態にあることを意味するからだ。

日本企業は韓国企業に負けてしまったのか

MONOist 18650型を大量に入手する場合、どの企業が候補に挙がるのか。

Kelty氏 18650型の仕入れ先として候補に挙がるのは4社だ。日本企業が2社、パナソニック(三洋電機を含む)とソニー、韓国企業が2社、Samsung SDIとLG Chemだ。

MONOist どのメーカーのセルがEV用として優れているのか。

Kelty氏 基本的に日本メーカーの方が電池技術が進んでいる。特にパナソニックを評価している。韓国メーカーは製造時間が短く、日本メーカーよりもコスト競争力が高いといえるが、電池技術自体で優位にあるとはいいにくい。

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