First SolarがCdTe太陽電池で記録樹立、モジュール変換効率14.4%:スマートグリッド
CdTe(カドミウムテルル)薄膜太陽電池の変換効率が着実に向上してきた。同電池はSi(シリコン)太陽電池よりも安価であり、変換効率向上が望まれていた。
米First Solarは2012年1月16日(現地時間)、アラブ首長国連邦アブダビで開催されている「World Future Energy Summit」(世界未来エネルギーサミット、2012年1月16〜19日)において、CdTe(カドミウムテルル)薄膜太陽電池モジュールの変換効率14.4%を達成したと発表した(図1)。NREL(National Renewable Energy Laboratory、米国立再生可能エネルギー研究所)が測定した結果である。なお、これまでの記録はFirst Solarが達成した13.4%だった*1)。
*1) 小面積セルの変換効率の記録は、同社が2011年7月に発表した17.3%である(関連記事)。モジュールでは小面積セルを多数接続して使うため、モジュール変換効率はセル変換効率よりも必ず下がる。
今回の記録は、オハイオ州Perrysburgの工場で量産ベースの製造技術と材料を利用して作った太陽電池モジュールで達成したのだという。なお、同社は2010年の太陽電池市場において、世界シェア1位である。
同社のCTOを務めるデーブ・イーグルシャム(Dave Eaglesham)氏によれば、「Si(シリコン)ベースの太陽電池と比較すると、CdTeには変換効率を大きく向上させる潜在能力が残されている」という。
First Solarは2011年12月に太陽電池モジュールの変換効率のロードマップを更新している。それによれば、2015年末には量産レベルのモジュールの平均変換効率として14.5〜15%を見込む。同社の平均変換効率は、2010年には11.4%だったが、2011年には11.7%に高まっている。2012年の第4四半期には12.7%まで伸ばせると予想した。
同社はCdTe薄膜太陽電池モジュールを既に5GW以上生産している。生産に要する時間も短縮しており、ガラス基板からCdTe薄膜太陽電池モジュールを作り上げるまでに2.5時間以下しか必要ないという。これにより、業界標準と比べてエネルギーペイバックタイムに優れるという。
エネルギーペイバックタイムとは、太陽電池の製造時に消費したエネルギーを太陽光発電によって回収するために必要な時間をいう。製造時のエネルギーが少ないものや、製造時間の短いもの、変換効率の高いものが有利だ。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2011年7月に公開した資料によれば、単結晶Si(シリコン)太陽電池が最も長く、CISが最も短いという(関連記事:あなたの街にもメガソーラー、うまく立ち上げるには)。ただし、NEDOの資料ではCdTeについて触れていない。
なお、各種の太陽電池の特長と、変換効率競争については、関連記事「未来の太陽電池をドイツ企業が開発、有機薄膜型で最高効率達成」を参照してほしい。
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