制度に翻弄される国内の風力発電、FIT導入で大幅増は可能なのか:立ち上がる風力発電(4)(2/2 ページ)
日本風力発電協会が公開した資料によれば、国内の風力発電事業が失速している。同協会によれば、固定価格買い取り制度(FIT)の開始を見込んだ助成制度廃止が原因だ。FITの買い取り価格いかんでは、風力発電の回復が難しい。
東北電力と九州電力の導入量が多い
日本風力発電協会は電力会社別の導入量を推定した。2011年度では、東北電力(550MW)と九州電力(410MW)、東京電力(357MW)の導入量が多い(図2)*2)。
*2) 都道府県別の導入量では、青森県と北海道がいずれも280MWを超えており、次いで鹿児島県の200MWが多い。秋田県と福島県、静岡県、石川県、島根県、長崎県は100MWを超えている。逆に、導入量が10MWを下回るのは、宮城県と栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、富山県、滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、岡山県、広島県、香川県、宮崎県だ。
この状況は、環境省が2011年4月21日に発表した「平成22年度 再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査」の結果とは合致していない(関連記事:現実的に見ても大きな可能性を秘める「風力発電」)。調査によればまず北海道電力、次に東北電力の管内で大量の風力発電が可能なはずだ。調査結果と実態が懸け離れているのは、現在の国内の風力発電は火力発電とセットで運用されているからだ。
2013年度以降は北海道電力と東京電力、東北電力と東京電力が組むことで導入量拡大を目指す(関連記事:使いにくい風力を使いやすく、東京電力など電力3社が風力発電拡大へ)。
2011年12月には電力6社、すなわち、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力が地域間連系線を活用して、風力発電導入拡大を図ることを発表している。この取り組みでは風力発電の調整力が小さい北陸電力や四国電力と、調整力に余裕がある中部電力、関西電力が組む(図3)。
図3 電力6社による風力発電導入の試み 風力発電は出力が変動しやすいため、他の発電方式を調整力として利用する方式が考えられている(図下)。北陸電力と四国電力の風力発電を中部電力、関西電力の調整力でカバーすることで、20万kW×2程度の風力発電を増やせるという(図上)。出典:関西電力
三菱重工業が健闘
メーカー別の導入量も公開した(図4)。トップは世界最大規模の風力発電機(タービン)メーカーであるデンマークVestas Wind Systemsである*3)。2011年度の推定導入量2522MWのうち、国産タービンの占める比率は23%(三菱重工業、日本製鋼所、富士重工業の合計)と低い*4)。
再生可能エネルギーの伸び頭は現時点で風力発電である。中国や米国、インド、スペインなど世界各国で2010年に導入された風力発電の規模は35.8GWに達する。同時期に導入された太陽光発電(16.6GW)の2倍以上の規模に相当する。太陽光発電では複数の国内メーカーが健闘しており、風力発電にも期待したい(第1回へ)。
*3) 2003年に合併したデンマークNEG Miconとの合計値を示した。なお、米国の調査会社Emerging Energy Researchによれば、2008年時点の世界シェアはVestas Wind Systemsが19%、次いで米GE Wind Energy(18%)、スペインGamesa Corporación Tecnológica(11%)、ドイツEnercon(9%)である。三菱重工業のシェアは3%だ。
*4) ただし、日本製鋼所の値はGeneral Electric(GE)の輸入品を含むため、実際は23%よりも低くなる。なお、IHI(IHI-NORDEX風力発電設備)と荏原フライデラーウインドパワーは海外メーカーが製造したタービンを使った風力発電所を建設している。
<訂正>記事の掲載当初、本文第1段落で「2011年1月10日」とあったのは「2012年1月10日」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。上記記事は既に訂正済みです。
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