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災害からケータイ基地局を守れ、太陽光で7日間稼働スマートグリッド(2/2 ページ)

東日本大震災ではさまざまなインフラが甚大な被害を受けた。その1つが携帯電話基地局だ。外部電源が断たれても動き続ける基地局を作るにはどうすればよいのだろうか。太陽光発電システムと二次電池を組み合わせる手法だろう。燃料の入手が難しかったり、コスト面で折り合いが付きにくい発展途上国向けのソリューションとしても優れている。

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海外では燃料の節約やメンテナンスコスト削減が重要

 ファーウェイ・ジャパンの親会社である中国Huawei Technologiesは、同ソリューションを既に世界60カ国以上の80社以上の通信事業者に供給している。累計売上は1万4000セットだ。

 海外では、災害対応よりも、CO2排出量削減やTOC削減を重視する場合が多いという。例えば発展途上国である。発展途上国では広い国土に通信線を張り巡らせる前に、携帯電話インフラが定着した。それだけに携帯電話基地局をいかに維持するのかが課題になっている。

 2009年にケニアSafaricomに同ソリューションが導入された事例を見てみよう(図3)。


図3 ケニアの位置 ケニアはアフリカ東海岸に位置し、赤道直下にある高原の国だ。面積は日本の約1.5倍。化石燃料の産出はない。火山国であるため、地熱発電の比率が14.6%(2007年時点)と高い。著名な火山は、同国中央にそびえる最高峰のケニア山(5199m)。

 ソリューション導入前のSafaricomの課題は、送電線だった。ケニア国内で送電線を利用できる地方は30%に限られており、それ以外では通信インフラが整備できなかった。さらに、Safaricomの基地局のうち、25%がディーゼル発電機のみに依存していた。系統電力の停電が頻繁に起こるため、送電線が利用できたとしてもディーゼル発電への依存度が高く、燃料費と燃料補給コストが高くなり、同国の自然保護基準に準拠できなかったという*3)

*3) ケニアにはマサイマラ国立保護区(面積1812km2)など10以上の国立公園、国立保護区が定められており、1987年以降、一貫して観光が最大の外貨獲得源となっている。

 さらに運搬中や補給中に燃料が盗難に遭う、環境条件により燃料の品質が劣化するなど固有の課題もあった。ケニアはインド洋に面しており、海上の漁師のために離島も携帯電話サービスの範囲となっていたが、燃料補給が間に合わないことがほとんどだったという。

 ソリューション導入によって、このような深刻な状況が改善できた。太陽光発電と風力発電設備をディーゼル式基地局に追加することで、昼間・夜間、雨期・乾期を問わず、安定的に電力を供給でき、運営コストを劇的に削減できたという*4)

*4) ケニアでの事例が成功した要因の1つは、太陽光を利用しやすい地理的な条件だ。ケニアは1平方メートル当たりの年間平均入射エネルギーが高い。日本は180〜190Wだが、ケニアでは260Wにも達する。このため、変換効率が劣る安価な太陽電池でも十分な電力を得ることができる(高効率な太陽電池を少数使ってもよい)。

 Huawei Technologiesが最初にソリューションを提供したのは、ケニアの首都ナイロビから50km離れたあるマサイ居住区である。このマサイ居住区は送電網の外にあり、小さな風力発電機とディーゼル発電機によって電気を得ていた。ここに太陽電池モジュールと制御システムを追加導入することで、燃料消費量が95%を超えるほど減少し、燃料輸送費とメンテナンス費を90%以上削減できたという。


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