未来の太陽電池をドイツ企業が開発、有機薄膜型で最高効率達成:スマートグリッド(2/2 ページ)
太陽電池にはSi(シリコン)を使わないタイプもある。変換効率が非常に高いもの、製造コストを低減できるものなどさまざまだ。有機薄膜太陽電池は、製造コストの低減がたやすく、軽く薄い太陽電池を実現できる。
最大のメリットは製造コスト低減
Heliatekは変換効率を着実に伸ばしており、今回9.8%を実現した。この値は最終的な目標に対して、どの程度の成果なのだろうか。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2009年に公開した太陽光発電に関するロードマップ「PV2030+」によれば、2017年時点の有機薄膜太陽電池の変換効率の開発目標は12%(セル)、10%(モジュール)だ。2025年時点の目標はセル・モジュールとも15%だ。各社*3)とも10%を1つの山として見ている。
*3)国内ではKonarka Technologiesと提携したコニカミノルタホールディングスや、東レ、住友スリーエム(米3M)、三菱化学などが開発成果を発表している。
各社の狙いは変換効率よりも製造コストだ。10%程度の変換効率が実現できれば、製造コストで勝る有機薄膜太陽電池に活用の道が開ける。
有機薄膜太陽電池に利用する有機半導体には高分子系と、Heliatekなどが採用する低分子系がある。成膜方法は蒸着法(Heliatek)と塗布法に分かれる。
塗布法は究極の低コスト化が可能な手法だ。常温、常圧で大量生産に向くロールツーロール法を採用しやすいためだ(図4)。ロールツーロール法が実現すると、プラスチックフィルムと同様の方法で量産できることになる。全ての太陽電池の中で最も材料の使用量が少なくなるため、材料コストも下がる。
図4 印刷技術を使って製造した有機薄膜太陽電池 米Konarka Technologiesの製品。左は透過型、右はフレキシブルであることを示している。同社はPET(ポリエチレンテレフタラート)フィルムを母材として使ったロールツーロール生産を開始している。現在の課題はロールツーロール生産では変換効率がいくぶん低くなることだ。2010年時点で4%だという。
この他にも有機薄膜太陽電池にはメリットがある。有機物はSiよりも軽く、薄くでき、自由な形状に加工しやすい。つまり、軽量で曲がる太陽電池が可能になる。繊維に織り込んだ太陽電池、窓ガラスと一体化した太陽電池、EVのボディの曲面に合わせた太陽電池などさまざまな用途が開ける(図5)。最後の夢はペンキのように塗るだけでどこでも発電できる太陽電池だろう。
図5 ドイツDaimlerのEV「smart forvision」 東京モーターショー2011に出展したもの。天井に透明な有機薄膜太陽電池を搭載している。ボディーの曲面に合わせており、デザイン性もよい。発電した電力は換気用ファンの駆動に用いる。有機薄膜太陽電池はドイツBASFが製造した。左下は太陽電池の拡大画像。
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