データの可能性を最大限に引き出す!! 近未来の製造業向けシステム:FAフォーラム・イベントリポート/SCF2011 Intelligent Systems
組み込み市場向けにマイクロソフトが打ち出す「Intelligent Systems」。東京ビッグサイトで開催された「システム コントロール フェア 2011」では、パートナー企業のデジタルとオムロンのブースで、Intelligent Systemsを具現化したコンセプトデモが披露された。
日本マイクロソフトは東京ビッグサイトで開催(会期:2011年11月16〜18日)された「システム コントロール フェア 2011(以下、SCF2011)」において、同社が組み込み市場向けに打ち出す「Intelligent Systems」(参考記事)を具現化したコンセプトデモを、パートナー企業であるデジタルとオムロンのブースで披露した。
同社が提唱するIntelligent Systemsとは、これまで閉ざされた環境の中で、ある機能を実現していた機器がネットワークにつながるようになることで、その機器が抱えている情報(センサー情報、システム情報など)を、その機器自身やシステム環境の改善に活用するだけでなく、企業活動全体、例えば、企業の意思決定や次期製品・サービスの開発などにまで役立てることが可能となるシステムのことを指す。同社は、ここに各種プラットフォームやサービス、ツールなどを包括的に提供していくビジョンを打ち出している。
今回のSCF2011では、製造業向けシステムにおけるIntelligent Systemsのイメージをつかむことができた。
既に実現可能なちょっと未来の製造業向けシステムの姿――デジタル
まず、デジタルのブースでは、野菜ジュースの製造現場を想定したIntelligent Systemsの展示デモが行われていた。デモ環境は、PLCなど制御機器とつながり専用HMIにより装置などの制御を行うデジタル製プログラマブル表示器「GP-4601T」(Windows Embedded CE搭載)、工場内のサーバPCとして同社の産業用ビルトインコンピュータ「PS-4000B」(Windows 7)と工場内の全工程の状態を表示するフラットパネルディスプレイ「FP3710-T」、さらにWindows Server 2008を搭載した上位システム(MES)で構成される。
デジタルのブースデモ。野菜ジュースの製造現場を想定した新しい製造業向けシステム。ディスプレイに表示されているGUI画面はVisioで作図したものを、デジタルが開発したアドオンツールによりXAMLに変換し実現している
これらはすべてネットワークでつながっており、相互接続性を保証するOPC(製造現場の各種装置とアプリケーションとを接続するための通信インタフェースの統一仕様)に基づき、各機器・装置からのデータをリアルタイムに収集し、Silverlightの技術によりグラフィカルに可視化する。また、製造現場におけるスマートフォンの利用も想定。Windows Phone端末でWebサービスを利用し、工場内の装置の停止などをリモートで操作したり、上位システム側の生産管理データをWindows Phone端末で閲覧したりといったデモを実演して見せた。実際の製造現場などでも「工場内の人員コストの削減や作業の効率化の観点から、モビリティの高いツールや端末などに注目が集まっている」(説明員)という。今回のデモでは、Windows Phoneアプリケーションのデザイン仕様に準拠しながらもワンタッチですぐに稼働停止してしまうことを回避するために、タッチ&ホールド(長押し)で動作を確定させるようなUIの工夫もなされていた。
このデモの肝は、データはもちろんのこと、専用HMIや全工程を監視する管理者画面といったGUIが、すべてサーバ側で管理されている点にある。「システムで用いるデータやコンテンツを集中管理することで、例えばライン替えのような変更があっても簡単に切り替えることができるし、システム構成の変更があっても柔軟に対応できる」(説明員)。さらに、海外進出・展開においてもWindows Azureを活用したクラウドベースの可視化も可能で、世界中どこからでも工程情報やビジネス情報をリアルタイムに閲覧することができる。「こうしたクラウドを用いた工程情報の管理・活用は先の東日本大震災やタイの大洪水などで注目が集まっている。仮に製造拠点が被災しても必要な情報やどこまで作業工程が進んでいたかの最新情報は全てクラウド上で安全に保管されている」(説明員)。
より簡単にデータベース連携を実現する次世代コントローラ――オムロン
一方、オムロンのブースでは、2011年7月末に販売を開始した次世代コントローラ製品「マシンオートメーションコントローラ Sysmac NJシリーズ」(参考記事)を用いた「Sysmac データベース連携コンセプト」のデモを実演していた。
ベルトコンベアから流れる「R」と書かれたチップをつかんで整理し続けるという産業用ロボットを、Sysmac NJシリーズ ロボット対応版(参考出展品)1台で制御。かつ「Sysmacの別タスクでデータベースに接続する処理を動かし、作業の完了信号を送り、データベースを更新している」(説明員)。デモ環境ではSQL Serverとクラウド上にあるSQL Azureに対して直接データを格納し、スマートフォンやタブレット端末からクラウド上のデータを参照し、現在の状況をリアルタイムに確認できる様子を披露した。
このコンセプトデモのポイントは大きく2つある。まず、Sysmacから直接SQL Serverに接続し、データを格納できる命令をオムロンが提供している点。そして、Sysmacの上位側に位置するサーバなどに特殊なソフトウェアを入れることなく標準ソフトウェアだけでSysmacと直接接続できる点だ。これらのポイントにより「非常に簡単にデータベース連携を実現できる」と説明員。
実際の現場においても、Sysmacのようなコントローラから直接データベースに接続し、データを格納するという利用ニーズは高いという。「品質トレーサビリティの観点で、逐一生産データを取得・管理したいというような場合に適している。従来のようにノートPCをつないでデータを取得するといったこともなくなり、楽に、安心・安全にこうしたニーズに応えることができる」(説明員)。
なお、装置設計に必要なI/O制御と位置制御のためのプログラミング機能、モーション動作設計機能、ネットワークの設定機能の他、データトレースや3Dシミュレーションなどの統合テスト環境としての機能も備えている「マシンオートメーションソフトウェア Sysmac Studio」に関する体験コーナーも設けていた。Sysmac Studioは、Windows Presentation Foundationをベースに開発された専用ソフトウェア環境である。
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