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我が社の太陽光発電所を作るには小寺信良のEnergy Future(6)(3/3 ページ)

企業が自家用の太陽光発電所を設けるとどのような利点があるのか、どのように建設すればよいのか、低価格化の工夫は何か、小寺信良氏が群馬県館林市の「館林ソーラーパーク」に迫った。

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自前の太陽光発電所の可能性と課題

 館林ソーラーパークは、驚異的な短期間、低コストで稼働までこぎ着けた。2011年の夏の電力不足で何ができるかを考え、企画から開発まで約4カ月、うち実際の現場での工期は2カ月だ。これまでの常識では、「発電所を作りたいなー」と思っても4カ月では無理だ。

 期間短縮に関して国際航業ホールディングスのウー・ウェン・ショウ(呉文繍)社長は、ヨーロッパや宮崎でのメガソーラー開発の経験から、備品や部材調達期間短縮のノウハウを得ることができたこと、今回は電力不足解消のための施設ということで、各所の許認可が比較的早く下りたことなどを挙げている(図14)。通常は認可だけで3カ月ほどかかるそうである。また施設が小さければそれだけ許認可も早いことから、あえてこの規模にしたという事情もある。

社長
図14 国際航業ホールディングスのウー・ウェン・ショウ社長 メガソーラー設置の経験を生かしたことや、許認可期間を短くできたことなどから、4カ月で稼働までこぎ着けたという。

 自社の航空写真事業から始まった地理情報システムを持っていることも大きい。太陽光発電に適した土地を探すのに、いちいち不動産業者から情報を取り寄せて、周りに日陰になるような建物がないかなど下見に行ってたらきりがない。それよりも空から見て、適切な場所を探した方が全然早いわけである。

 施工に関しても、短期間で完了する工夫が随所に見られる。電力配線も穴を掘って埋めるのではなく、パイプを使って地表に這わせる方式とした(図15)。これによりコスト削減にも寄与できたという。

配線
図15 配線の敷設状況 配線は地下に埋めずに地表を這わせている。工期短縮、コスト削減の取り組みの一環だ。

 トータルコストは、土地代を除いておよそ1億7千万円。500kWの施設なので、1kW当たり35万円ほどである。宮崎ソーラーウェイでは1kW当たり40〜50万円掛かっていた。

 低コスト化には太陽電池モジュールの低価格化が最も大きい。なにせ数が数なだけに、円高を利用した輸入品の方が有利である。

 海外メーカーの太陽電池モジュールを採用しながら国内産業復興支援という視点も入っているようだ。インバータなどの電気設備は、全て国産メーカー品だ。

 今後、同様の発電所を開設するにあたり、幾つかの法改正が必要なのではないかと、ウー社長は言う。太陽光発電所がクリアしなければならない法律として、電気事業法や工場立地法がある。しかしこれは旧来の火力や原発用の規制だ。太陽光発電所の場合、規模や時間、コスト、立地条件など、これまでの発電所とはベースになるものが全然違う。規制緩和を進めていかないと、普及は難しいのではないかと述べた。

設置場所に困らない太陽光発電

 この館林ソーラーパークは、この規模でも立派な発電所だ。ただ、すぐ隣のブロックには普通の住宅がある。従来の発電施設の常識から考えれば、あり得ない近さだ。もともと工業用地なので、工事が始まったころには地域住民から何ができるのか心配する声もあったが、太陽光発電所だというとスムーズに理解が得られたという。近接する一部の住宅の屋根には太陽電池モジュールが設置されていることから、住民側の予備知識も十分だったということだろう。

館林市長
図16 安樂岡一雄(やすらおかかずお)館林市長 「新しいエネルギーで、新しいビジネスが広がってくるだろう」

 視察ツアーに来賓として訪れた安樂岡一雄(やすらおかかずお)館林市長はあいさつの中で、「東日本大震災以降、エネルギーに関する国民の考え方が一変した。原子力にあまり頼らない新しいエネルギーを開発していきたいということで、太陽光に期待が掛かっている。国会では再生可能エネルギー法案も通った。詳細は決まっていないが、これで太陽光を活用した新しいビジネスが広がってくるだろう。そういうタイミングで、このような事業がスタートしたことを歓迎したい。情報交換しながら、よりよい地域貢献をしていきたい」と述べた(図16)。

 この夏の大口需要家向け15%電力使用制限令は、暑さの峠は越えたとして、当初の予定であった9月22日から前倒しで9月9日に終了した。皮肉なことに、館林ソーラーパーク運転開始も、9月9日であった。この夏の電力使用制限には結果的に貢献できなかったが、この施設は25年以上動く設計になっているという。夏の問題だけでなく、これからも継続的に自社の電力をまかない続けることになる。

 自社での発電となると、普通は自社の敷地内に設置することを考えがちだが、太陽光発電の場合は広い面積が必要になるため、ビルの屋上などでは限界がある。だが館林ソーラーパークの例は、遠隔地で日照時間の長い土地を安く借り、そこで発電した電力を託送供給するという方法に1つの道筋を作ったといえるだろう。


筆者紹介

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小寺信良(こでら のぶよし)

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

Twitterアカウントは@Nob_Kodera

近著:「USTREAMがメディアを変える」(ちくま新書)



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